夢のカリフォルニア/ウェス・モンゴメリー | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

California Dreaming


ジャズを聴いていると、

「あれ?このミュージシャンどうしちゃったんだろう?」

と思うことがよくあります。

編成や曲目によって、全く異なる表情を見せるからです。


そんな「意外な表情」を晩年に見せたのがウェス・モンゴメリー。

言わずと知れた、ジャズ・ギターの大御所です。

ジャズ・ファンにとってはお馴染みの話ですが、

彼は「オクターブ奏法」という弾き方を編み出し、

太く、ドライブ感のある音で一世を風靡しました。

音楽理論や奏法は良く分からない私ですが、

ウェスのプレイを聴けばすぐに彼と分かります。

それだけのスタイリストであり、多くのミュージシャンに

影響を与えました。


彼を有名にしたのは「インクレディブル・ジャズ・ギター」や

「フルハウス」といったコンボ作品です。

時に火が出るような熱い音と共に、

超絶技巧を披露した作品群は今でも輝きを持っています。

しかし、45歳の若さで亡くなる直前、

ウェスはコンボでのレコーディングを行わなくなります。

代わりに大編成のオーケストラと組んだリーダー作を

立て続けに発表しました。

そこでは燃えるようなアドリブはぐっと減り、

雄大なスイング感で大勢のミュージシャンを引っ張る

ウェスが記録されています。


正直、私はコンボ時代の圧倒的な演奏に魅力を感じ、

オーケストラと組んだウェスは

彼のキャリアでの「付け足し」程度にしか

考えていませんでした。

それが、年齢を重ねて許容範囲が増したのか、

この頃は大編成ものも楽しめるようになってきました。


お気に入りの作品の一つが「夢のカリフォルニア」です。

1966年9月、ウェス42歳の時の録音。

フォーク・ロックグループ「ママス・アンド・パパス」の曲が

タイトルになっていることからも分かるように、

全体的にポップさが漂うアルバムです。


私がこの作品を気に入ってしまったのは、

「あれ?ウェス、どうしちゃったの?」と思える一曲があるからです。


④More,More,Amor(モア・モア・アモール)

S.レイクという、おそらく無名の(?)作曲者によるナンバー。

ここでのウェスのギターは彼の生涯の中で最も「優しい」

ものだと思います。

歌謡曲になりそうな甘いメロディを、

ウェスが慈しむように弾いていきます。

驚くのは、いつもの乾いた音ではなく、

ちょっと湿ったタッチになっていることです。

おそらく、ウェスはこの曲を本当に愛していたのではないでしょうか。

3分を切る短い演奏時間の間、

彼はほとんどメロディしか弾いていないのですが、

どの音にも温かみがあふれています。

こんな彼が聴けるなら大編成でもポップでも

何でもいいではないですか。

雄弁なアドリブがなくても心は伝わります。


かつてデュ-ク・エリントンは

「この世には2種類の音楽しかない。それは、いい音楽と悪い音楽だ」

と言ったとか。

ミュージシャンが編成や曲で変化を見せても、

「いい音楽」であれば何の問題もない。

久しぶりに偉人の言葉を思い出させてくれた作品でした。