ジャズを聴いていると、
「あれ?このミュージシャンどうしちゃったんだろう?」
と思うことがよくあります。
編成や曲目によって、全く異なる表情を見せるからです。
そんな「意外な表情」を晩年に見せたのがウェス・モンゴメリー。
言わずと知れた、ジャズ・ギターの大御所です。
ジャズ・ファンにとってはお馴染みの話ですが、
彼は「オクターブ奏法」という弾き方を編み出し、
太く、ドライブ感のある音で一世を風靡しました。
音楽理論や奏法は良く分からない私ですが、
ウェスのプレイを聴けばすぐに彼と分かります。
それだけのスタイリストであり、多くのミュージシャンに
影響を与えました。
彼を有名にしたのは「インクレディブル・ジャズ・ギター」や
「フルハウス」といったコンボ作品です。
時に火が出るような熱い音と共に、
超絶技巧を披露した作品群は今でも輝きを持っています。
しかし、45歳の若さで亡くなる直前、
ウェスはコンボでのレコーディングを行わなくなります。
代わりに大編成のオーケストラと組んだリーダー作を
立て続けに発表しました。
そこでは燃えるようなアドリブはぐっと減り、
雄大なスイング感で大勢のミュージシャンを引っ張る
ウェスが記録されています。
正直、私はコンボ時代の圧倒的な演奏に魅力を感じ、
オーケストラと組んだウェスは
彼のキャリアでの「付け足し」程度にしか
考えていませんでした。
それが、年齢を重ねて許容範囲が増したのか、
この頃は大編成ものも楽しめるようになってきました。
お気に入りの作品の一つが「夢のカリフォルニア」です。
1966年9月、ウェス42歳の時の録音。
フォーク・ロックグループ「ママス・アンド・パパス」の曲が
タイトルになっていることからも分かるように、
全体的にポップさが漂うアルバムです。
私がこの作品を気に入ってしまったのは、
「あれ?ウェス、どうしちゃったの?」と思える一曲があるからです。
④More,More,Amor(モア・モア・アモール)
S.レイクという、おそらく無名の(?)作曲者によるナンバー。
ここでのウェスのギターは彼の生涯の中で最も「優しい」
ものだと思います。
歌謡曲になりそうな甘いメロディを、
ウェスが慈しむように弾いていきます。
驚くのは、いつもの乾いた音ではなく、
ちょっと湿ったタッチになっていることです。
おそらく、ウェスはこの曲を本当に愛していたのではないでしょうか。
3分を切る短い演奏時間の間、
彼はほとんどメロディしか弾いていないのですが、
どの音にも温かみがあふれています。
こんな彼が聴けるなら大編成でもポップでも
何でもいいではないですか。
雄弁なアドリブがなくても心は伝わります。
かつてデュ-ク・エリントンは
「この世には2種類の音楽しかない。それは、いい音楽と悪い音楽だ」
と言ったとか。
ミュージシャンが編成や曲で変化を見せても、
「いい音楽」であれば何の問題もない。
久しぶりに偉人の言葉を思い出させてくれた作品でした。
