このブログでモダン・ジャズを取り上げ続けてきた私ですが、
他のジャンルの音楽を一切聴かないかというと、
そうでもありません。
私が音楽を聴き始めた80年代は、
ジャズと兄弟関係にある「フュージョン」の
全盛時代でもありました。
同列に扱うと怒られそうですが、
日本では渡辺貞夫、日野皓正、カシオペア、
スクエア、高中正義などが大活躍。
彼らの音楽に熱心に耳を傾けていましたし、
新譜が待ち遠しかったものです。
本場アメリカではボブ・ジェームス、リー・リトナ-、
ハービー・ハンコック、デイブ・グルーシン、ラリー・カールトン
などなどが活躍。
その中で、当時の「ガキ」から見て、
「大人の洗練さ」を感じさせてくれたのが
グローヴァー・ワシントン・ジュニア(sax)です。
彼の代表作と言えばこの「ワインライト」。
1980年に録音されたこの作品は、
当時の「東海岸フュージョン」のイメージを
決定づけたと言ってもいいでしょう。
よく「メロウ」と形容される、都会的な雰囲気。
実はサックスのソロスペースはそれなりに与えられており、
グローヴァーもけっこう熱く吹いています。
しかし、通して聴いてみると、その印象は希薄です。
全体に緻密なサウンド設計が施されていて、
かっちりとした「枠」があるからです。
多少激しいサックス・ソロがあっても、
それに合わせてリズムがヒートすることは基本的にありません。
その結果、安心して夜のバーで聴けそうな、
優雅なサウンドが出来上がったのです。
主なメンバーのみ記しましょう。
Grover Washington,Jr.(ss,as,ts)
Bill Withers(vo)
Ralph MacDonald(per)
Steve Gadd(ds)
Marcus Miller(b)
Eric Gale(g)
Richard Tee(Fender Rhodes)
この作品にちょっと変わった彩りを添え、大ヒットした曲があります。
⑤Just The Two Of Us
ソウル・シンガー、ビル・ウィザースのヴォーカルが唯一入り、
非常に粋な仕上がりになっています。
リチャード・ティーの柔らかで、透明感のあるキーボードに包まれ、
ウィザースの軽やかなヴォーカルが入ってくると、
夕暮れのNYにでもいるかのような気分に-。
それだけ、洗練された世界が広がるのです。
この曲がアルバムの中で異彩を放つのは、
グローヴァーのソロの部分。
パーカッションも含めたリズム隊が「燃える」のです。
サックス・ソロの最終盤に次々と熱のこもった
フレーズが繰り出されると、
他の曲で最低限の音に絞ってプレイしていたスティーブ・ガッドが
バチバチとドラムを叩き出す!
多重録音でレコーディングは進められたはずですから、
どこまで同時に演奏が行われたかは不明です。
しかし、ここでのエネルギー感は、
実際に向き合っての演奏が行われたのでは?
と想像させるものです。
長々と書いてきましたが、
実は私が「Just The Two Of Us」という曲を久しぶりに
聴きたくなったのは、日本人によるこの曲のカバーが
あったからです。
↓山崎まさよしによる「COVER ALL YO!」
ここに収められた「Just The Two Of Us」、
なかなかのものです。
山崎まさよしの高音ヴォイスが曲調によく合うことと、
サルサ風の大胆なアレンジが成功の理由です。
誰のアイディアかは分かりませんが、
オルケスタ・デラルスとコラボレートし、
バックを任せたことが素晴らしい。
歯切れのいいリズムと、ホーンアレンジを取り入れたことで、
この曲に隠し味としてあった躍動感が引き立ち、
新しい魅力が生まれました。
こういう、物真似ではないカバー、大歓迎です。
オリジナルの録音から30年近くを経て、
日本人ミュージシャンが新しい生命を吹き込んだ
「Just The Two Of Us」。
ずいぶん前に作られた音楽が大好きな私ですが、
やはりこういう挑戦はうれしいです。
現代のジャズミュージシャンにも
「果敢に、しかし音楽として魅力ある」
解釈を期待したいものです。

