前回の記事を書いた時点で非常に落ち込んでいた私ですが、
一日を経て、いろいろな方から励まされることが多く、
すっかり回復しました。
ありがとうございました。
人の温かさに触れた時に聴きたくなるジャズ。
いろいろありますが、私にとってこんな時に取り出したくなるのが
サックス・プレイヤーのズート・シムズ。
彼の演奏には多くの形容詞がつけられています。
「ホット」「ドライブ感」「スインギ-」「優しさ」「楽しさ」・・・・・
これだけポジティブなイメージで語られているミュージシャンも
珍しいでしょう。
雑誌「ジャズ批評」の2008年9月号では、
「ズート・シムズ特集」が組まれています。
これを読むと分かることは、二つ。
一つはズートが非常に「いい人」であったこと。
つきあいの深い日本のファンには、
家族分までお土産を持ってくるような人だったそうです。
温かい人柄で、気配りを忘れない人だったのですね。
そして、もう一つは、熱狂的な「ズート・ファン」がいること。
何でも、ズ―トが59年間の生涯で参加した作品は450枚を超えるそうですが、
地道に集めているファンがいるんですねぇ。
それだけ、ズートの魅力に惹かれる人が多い。
やはり、その「ポジティブな音楽」に吸い寄せられてしまうのでしょうか。
何だか私みたいな素人がズートを語るのは怖くなってきます。
が、ここでは個人的に好きな作品について
率直な印象を書くということに止めますので、
熱狂的なファンの方がいたら、お許し下さい。
テナーでの演奏が圧倒的に多く、ファンからも支持されているズートですが、
私は今回ご紹介する「ソプラノ・サックス」が大好きです。
正直、私も「これがズートのベスト1か?」と問われると困ります。
テナーマンとしての彼を高く評価しているからです。
しかし、楽器がソプラノであっても、ズートの親しみやすさ、温かさは
変わりません。
むしろ、「ソプラノでよくぞここまでハートフルな音楽を作り出した!」と
誉めてあげたいくらいです。
ちょっと疲れていて、テナーが重たく感じられるとき、
これを聴けば心が落ち着いて、安眠できること請け合いです。
1976年、ニューヨークでの録音。ズートは当時50歳です。
Zoot Sims(ts)
Ray Bryant(p)
George Mraz(b)
Grady Tate(ds)
各メンバーのプレイも素晴らしい作品です。
①Someday Sweetheart
正直、私は知らない曲なのですが、
タイトル通りというか、非常にあったかい曲です。
ドラムの気持ちよいイントロの後に入り込んでくるソプラノが
寛ぎと程良いぬくもりを持っていて、何とも気持ちいい。
続くソロも肩に力が入っていない軽快なもの。
何も難しいことを考えず、音の流れに身を任せていれば
それで幸せです。
続くレイ・ブライアントの重たいタッチのピアノ・ソロが、
なかなか良いコントラストを成しています。
ジョージ・ムラーツのベースソロは、
音は重くてもタッチは軽快。
いいではありませんか。
②Moonlight in Vermont
お馴染みのスタンダード。
ここでズートは、ぐっとテンポを落として、
実に大切にメロディを吹いています。
ソプラノの音も、ありがちな硬質の音ではなく、
木管楽器に近いような気がします。
この辺りの楽器に命を吹き込む力、
さりげないけれど流石です。
レイ・ブライアントのこれまた少し力の入ったソロの後、
流れるようなソロからメロディにつなぐ
ズートのプレイが絶品です。
⑦A Ghost of a Chance with You
②と同様に、ズート入魂のバラッドが聴けます。
「ススス・・・・」という息遣いが随所に聴こえるメロディ部分。
リラックスしていながら、テンションは高い、理想的な演奏です。
続くレイ・ブライアントはこの作品中、
最もロマンチックなアプローチで、美しい旋律を重ねていきます。
そして、再びズート。
淀みないフレーズの連続で最後のメロディまで引っ張ります。
この「一筆書き」っぽい音の流れが、ズートのソプラノの
魅力でしょうか。
お酒が大好きで、明るい人柄だったというズート。
音楽を聴くだけで、「一緒に一杯飲んでみたかった」と
思わせる人です。
きっと仲間のミュージシャンともいい関係を作っていたのでしょう。
私も、元気づけてくれる周囲の人たちに感謝しつつ、
日々を楽しく、豊かにするよう、心がけていきたいと思います。
