先日、「さっぽろ雪まつり開幕」のニュースをテレビで見て、
虚をつかれたような気がしました。
「そういう時期」だという心の準備がないのに、
いきなり現実を突きつけられたというか・・・・。
そう、今は2月なんですよね。
1年前、札幌にいた私にとって、2月に雪まつりが始まるのは
ごく自然なことでした。
以前より雪が減ったとはいえ、街が真っ白になり、
どんどん寒くなってくる中でのお祭りですから、当然です。
ところが、東京では2月になると、春が近づいていることを
体で感じ取れます。
冷え込みが緩んできて、日中はマフラーをしている人が
少なくなってきました。
最近では職場で「東京マラソンが近づいているね」といった
話題が出るほどです。
そんな中で、いきなり巨大雪像の映像を見てしまうと、
「あれ?今が雪のシーズン?」と思ってしまうわけです。
しんしんと雪が降る光景を、きょうぐらい思い出してみようか・・・・。
そこで取り出したのが、テナーサックス奏者デヴィッド・マレイの
「シーズンズ」です。
デヴィッド・マレイは現代を代表するサックス奏者と言っていいでしょう。
現在50代後半ですが、精力的な活動を続けています。
才能を高く評価されながら、メジャー・レーベルから作品を発表せず、
マイナーレーベルで挑戦を続けるという頑固なところがあります。
さらに、ものすごくエネルギッシュで攻撃的なプレイは
「闘士」という言葉が似合いそうです。
私の場合,彼の熱いプレイは、体調が良く、「きょうはマレイと向き合うんだ!」
という覚悟がないと聴けません。
しかし、今回ご紹介する「シーズンズ」は、マレイの中では例外的な作品です。
プロデューサーからの依頼を受け、バラッドを中心にした構成になっています。
曲は春夏秋冬にちなんだものばかり。
ところどころで彼の雄叫びはありますが、かなり聴きやすい内容です。
そして、この作品の方向性に大きく関与しているのが
ピアニストのサー・ローランド・ハナ。
マレイより20歳以上年上の大先輩がいることで、
カルテットに「重し」ができ、非常に安定した演奏になりました。
1998年、ニューヨークでの録音。
David Murray(ts,ba cl)
Sir Roland Hanna(p)
Richard Davis(b)
Victor Lewis(ds)
ここでは雪に関連した一曲をご紹介します。
⑨Snowfall
クロード・ソーンヒルの作曲。
大げさですが、私はこのメロディが
「静かに降る雪を描写した世紀の傑作」だと思っています。
「音もなく降る雪」を「音で表現すること」に成功しているからです。
カルテットの演奏も充実。
イントロのゆったりとしたリズムと、ハナの気品あるピアノ、
それにバス・クラリネットを軽く吹きあげる(!)マレイ。
「雪のもたらす静けさ」という曲のコンセプトを
それぞれよく分かっていることが伝わってきます。
バス・クラリネットのソロでは、マレイが雪のはかなさを表現するため、
そろそろと進んでいきます。
風のない中、降り積もる雪がイメージできる演奏です。
そして、続くハナのソロ!
一音一音を選び抜き、間を十分に生かして「雪」を描き出すという、
熟練の技には尊敬を覚えます。
目の前に白銀の世界が広がっているかのような気分になれます。
今月、札幌に行く用事があります。
その時、雪はどんな表情をしているでしょうか。
寒さが峠を越して、少し柔和な感じかな・・・
いや、まだまだ厳しい、凛とした表情でしょうか。
いずれにせよ、音楽だけでなく、
「音もなく降る雪」を味わえればな、と思います。
