ザ・ブロードウェイ・ビット/マーティ・ペイチ | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

The Broadway Bit


昨日の東京は温かく、天気にも恵まれました。

3連休を満喫している方も多いのではないでしょうか。

私も、日曜日にちょっとした仕事が入りましたが、

夜はフリーになり、久しぶりに美味しい夕食を食べることができました。

そんなことがあった後は、ちょっとゴージャスな気分で

ビッグ・バンドを聴いてみましょうか。


ウエスト・コーストを代表するアレンジャーであり、ピアニストでもある

マーティ・ペイチのビッグ・バンド作品。

このアルバム、様々な魅力があります。


一つは曲の良さ。

ブロードウェイのミュージカルで使われた曲を集めているだけに、

メロディーの美しさ・楽しさは申し分ありません。


もう一つは豪華なメンバー。

アート・ペッパー(as)、ビル・パーキンス(ts)、ジミー・ジェフリー(cl、bs)、

スチュ・ウィリアムソン(tp)、そしてスコット・ラファロ(b)・・・・・

それぞれの充実したソロが聴きものです。


そして、ジャケット。

舞台の出番を待つ踊り子たちを、見事な構図でとらえています。

一人が読んでいるのはジャズ雑誌「ダウンビート」。

こういう粋なジャケット、最近なかなかないですよね。

私は渋谷の良心的なレコード屋さんでこのLPを買いました。

人気作だけあって、残っていたのは最後の一枚。

良かった・・・・・。


1959年、ロサンゼルスでの録音。

西海岸ジャズの充実ぶりを伝える一作でしょう。


①It's All Right With Me

ミュージカル「Can-Can」からの一曲。

歯切れのいいブラスをバックにジョージ・ロバーツのトロンボーンが

メロディーを奏でます。

このモゴモゴしたトロンボーンと立ち上がりがいいブラスの

コントラストが面白いです。

最初のソロは何とビクター・フェルドマンによるバイブラフォン。

ブラスではなく、軽快なこの楽器を冒頭に持ってきたことが

非常に斬新な印象を与えます。

続くトロンボーン、トランペットのソロのバックでは

フェルドマンによるパーカッションのリズムが隠し味として利いていて、

ますます「軽快度」が上がってきます。

「西海岸ならではの爽快なビッグ・バンドをやるぞ!」というリーダーの

宣言が聞こえてきそうな演奏です。


②I've Grown Accustomed To Her Face

「マイ・フェア・レディ」でおなじみの曲。

まず、ジミー・ジェフリーによる美しいクラリネットでグッと

引き付けられます。

クラリネットでこんなにも切ない表現ができるのかー

感服です。

そして、続くペッパーの柔らかく、しっとりとした

アルトサックスの素晴らしさ!

彼にしか出せない艶のある音色が凝縮されており、

心に残ります。


⑦If I Were A Bell

「ガイズ・アンド・ドールズ」からの曲。

最初に楽しい鐘の音と、ドラムのビートが響き、

どんな演奏になるか期待してしまいます。

ジミー・ジェフリーのバリトン・サックスと

ペッパーのアルト・サックスを使って

メロディーを立体的にする手法にまずは驚き。

この辺り、ペイチのアレンジが光ります。

続くトランペットなどのソロのバックでは、

ふんわりとした「ホーンのじゅうたん」がひかれ、

何とも気持ちが良くなります。

ソロの最後を飾るのはペッパー。

短いながら独特の伸びのあるソロが聴けます。

彼が入ると、急に演奏が「締まった感じ」になるから不思議です。


アルバム全体に「弾むような」トーンがあります。

これには、スピード感のあるスコット・ラファロのベースの影響が

大きいと思われます。

また、ブラスの響きが柔らかく、ビッグ・バンドにありがちな

「金属音が突き刺さってくる」感じがしません。

ここにも、ペイチの品の良いアレンジが大きく貢献していると思います。

ビッグ・バンドとなると、なかなか馴染みにくく、

構えてしまうことも多いのですが、

コンボ感覚で聴けるのも本作の魅力です。

華やいだ気分でジャズを楽しみたいときに

聴いていただきたい一作です。