枯葉/ドン・ランディ | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

Where do we go from here?


突然ですが、ウルフルズの「ええねん」という曲、

ご存知でしょうか?

トータス松本の作詞作曲、歌詞をちょっとだけご紹介しましょう。


何も言わんでも ええねん

何もせんでも ええねん

笑いとばせば ええねん

好きにするのが ええねん

感じるだけで ええねん

気持ちよければ ええねん

それでええねん それでええねん・・・・


いやあ、非常にまっすぐな歌詞ですよね。

この歌詞に通じるものがあるのではないかと

私が密かに思っているジャズマンがいます。

それがピアニストのドン・ランディです。


この作品でのランディのタッチは基本的に楽しく、

ファンキーなものです。

「俺が気持よければええねん!」と言って

弾いているかのようです。

基本的にこの人、エンターテイナーなのだと思います。


ランディは1937年の生まれ。

父親は映画作りに関わっていて、

ランディ少年は舞台関係者などに囲まれて育ったそうです。

最初の本格的な仕事はシンガーやコメディアンに伴奏を

つけることだったそうなので、

彼のショーマンシップはそこで磨かれたでしょう。


1962年に録音された「枯葉」。

典型的なピアノ・トリオで、メンバーが強力です。


Don Randi(p)

Leroy Vinnegar(b)

Mel Lewis(ds)


②Waltzing Matilda

非常に気持ちのいいワルツ。

ランディは可愛らしいメロディーを弾きながら、

徐々にテンポを上げていきます。

盛り上がってきたところでブルース・フィーリング

たっぷりのソロに転換。

この辺りのスムーズさ、さすがエンターテイナー!

という感じです。

ソロの最後にはやや強いタッチも出てきますが、

メロディーに戻るところは潮が引くようにすっとまとめあげる。

観客を引き付ける術を身につけている良質の

「演技」のような演奏です。


③I Love Paris

コール・ポーターのスタンダードをラテンリズムに乗せるという、

意外な始まりかたをします。

ここでのランディのソロは実に鮮やか。

非常にリズミックで、音もはっきりと「立って」います。

しかし、それが大げさな誇張になったり、鼻についたりはしない。

このギリギリのところでの品のよさが彼の魅力となっています。


⑥Interlude

ランディのオリジナル。優しいバラードです。

彼の作曲能力の高さを証明するトラックでしょう。

ここでは、メル・ルイスの歯切れいいブラシに乗って、

やや沈んだトーンのソロを聴くことができます。

ランディの持つ多様な表情の一つに触れることができます。


他にも、グイグイ引っ張るソロが聴ける⑦の「枯葉」など、

いい演奏ぞろいです。

アルバム全体を通して、リズムやメロディーのアレンジに

様々なチャレンジがあるのがうれしい。

このアルバムの原題が

“Where do we go from here?”

となっているのは、自分たちでもどこに行くのか分からない、

という感覚があったからでしょうか。


何にせよ、ここには演奏することの喜びがいっぱい詰まった

ジャズがあります。

私たちはそれを「感じるだけでええねん」。