ジャズを聴く楽しみの一つに、演奏者のパーソナリティーを
想像する、ということがあるのではないでしょうか。
何しろ、アドリブでかなりの裁量が許されている音楽、
演奏者の個性が出るのは当たり前です。
聴きながら、「この人、図々しいなぁ」とか、
「うーん、変わり者だな」とか、「こういう優等生いるな」とか
考えるのも楽しいものです。
「ちびまるこちゃん」のクラスではないですが、
いろんな人間がいることを喜ぶことができれば、
ジャズはぐっと取っつきやすくなります。
今回ご紹介するのはリチャード・ワイアンズ(p)のトリオ作品。
1978年、彼が50歳にして初めて録音したリーダー作です。
安定した実力を持ちながら、遅いデビューとなった訳には、
彼の「つい目立ちすぎないようにしてしまう」控えめな性格があると
私は勝手に想像しています。
持っている輸入盤CDには、同じくピアニストのホレス・パーランが書いた
温かいライナーノーツがあります。
パーランはワイアンズの明確なラインを讃えた上で、
「彼のプレイからハンク・ジョーンズを思い出した」と書いています。
以前ご紹介したハンク・ジョーンズ(p)も強烈なインパクトはないながら、
品がよく、堅実なプレイをする人。
この二人に共通するものがあるという指摘、納得できます。
ワイアンズのような引っ込みがちな人が、ちょっとだけ主張した時、
適度に「華」がある演奏が生まれます。
そんな曲について記します。
③As Long As There's Music
ブロードウェイミュージカルから生まれた、ワルツ曲。
ワイアンズの上品なピアノと、バックでサクサクいうブラシが
絶妙のバランスをとるメロディー。
続くピアノソロはメロディーの延長のような愛らしいもの。
それでいてワルツの楽しさを感じさせる鮮やかな横のラインが随所に走り、
力強さもあるものになっています。
全体的に無駄なところがなく、この作品の一番の聴きものだと思います。
⑤Never Let Me Go
ピアノ・ソロで綴られるバラッド。
最初のメロディー部分でのピアノが美しい。
派手さはありませんが、「メロディーを引き立てる」かのように
大切に弾いているところに好感が持てます。
2分過ぎから転調してスイングし始め、再びしっとりと終わる
展開力も見事です。
⑥Yesterdays
有名なスタンダードが少し崩されて演奏されています。
リズムが変則なのですが、大抵失敗するこうしたアプローチでも、
難なく上品にまとめるのが彼のすごいところ。
3分過ぎに現れる、少々攻撃的ながら嫌味にならない右手の使い方など、
大したものです。
好きなアプローチではないのですが「聴かされて」しまいました。
この作品、デンマークのジャズクラフトというレーベルが録音しました。
北欧の会社のもとで初リーダー作を制作したというのも渋い話で、
何ともワイアンズらしい。
でも、決してメジャーな会社でなくても、地道に頑張っているピアニストを
見ていたプロデューサーがいたわけで、それを考えるとうれしくなります。
クラスでひっそりとしている子供の才能を開花させる、
そんな先生がいるといいですよね。