米アカデミー賞視覚効果賞の『ゴジラ-1.0』を観てきました。

午後1時35分からの上映に8割の入り。予想外だったのは高齢者が多かったこと。少なくても半数はシニア客ではないでしょうか。

自分たちのことを棚に上げて、皆さん楽しめるのか心配しました。

 

ゴジラ映画のシリーズにはとんと興味がなく、1954年公開の最初のゴジラも観たかどうか、あやふやな記憶しかありません。

今回は山崎貴さんが監督だということで多少の関心はありましたが、米アカデミー賞受賞には仰天しました。海外でも人気のシリーズであることは承知していましたが、まさか受賞するとは!

実見してその出来栄えを確認しなければ、と出かけた訳です。

 

 

 

125分の長尺の作品ですが、全く飽きることなく、特に後半は手に汗握るゴジラとのハラハラドキドキの闘いと、人と人との想いの熱さに思わず涙しました。

話を聞いた娘から、怪獣映画を見て泣くなんて信じられない、とコメントをもらいましたが、終戦直後の生き残った人々の切羽詰まった日々の暮らしの中で見せる交流や優しさが丁寧に描かれ、まずは、人間ドラマとして極めて高い水準にあったからだと思います。

 

あらすじは Wikipedia が詳細かつネタバレなしで適切です。

Youtube には様々な観点から細部にわたって解説や感想の映像が出ています。それぞれ面白いのですが、とくに興味深く思ったのは、英国公開での感想で、『ALWAYS 三丁目の夕日』も是非観るべき、というおそらく英国人女性の意見に出会ったことです。

確かに全体のテイストはよく似ています。この映画のシリーズにも泣かされました。血のつながりのない者同士が寄り添い、紆余曲折を経て家族になっていくストーリーは共通です。『ゴジラ-1.0』が100%ハッピーエンドといって良いか迷いますが、とりあえずは一件落着、笑顔で終わった点も同じ。

実は翌日、購入してあった『ALWAYS 三丁目の夕日』のDVDを夫婦で観ました。高度経済成長期真っ只中の市井に暮らす人々を描いたほのぼのとした良い映画です。VFXが当時の東京の街並みや暮らしの様子を描き、そのリアルさに驚いたものです。『ゴジラ-1.0』がその延長上にある作品であることは確かです。

 

日米アカデミー賞をはじめ世界中の様々な映画賞を受賞した『ゴジラ-1.0』ですが、私が特に気に入ったのはシアトル映画批評家協会賞の悪役賞をゴジラ自身が受賞したことです。悪役あってのヒーロー・ヒロインですから、とても適切な受賞だと感心しました。

 

米アカデミー賞といえば、授賞式でのアジア人への人種差別が話題になりました。その内容はともかく、米国内での感情的で過敏な反応が気になります。かえって人種のみならず性や思想・宗教の差別を煽る結果になることを恐れます。

世界を滅亡させる「パンドラの箱」を開いた天才科学者を描いた『オッペンハイマー』が今回の米アカデミー賞の焦点でした。原爆をテーマとする作品が米アカデミー賞で日米二つ同時に受賞したことの「共時性」が、単なる偶然ではないように思われます。

それを考えるよすがとして、3月29日から日本国内で封切りされるという『オッペンハイマー』は必見だと感じています。

 

『ゴジラ-1.0』の細部を確認したいのもあって、また観る時は評判のモノクロ版にしようと思っていますが、今のところ上映館がTOHOシネマズ日比谷だけのようですね。今後どうなるかは分かりません。

 

映画づいてしまいました。