まずまずの天気が続いているので、このところ毎日1時間ほど雲や花の写真を撮るため歩き回っています。季節の香りに導かれてなじみのない道をうろつくのも、まあ、散歩の愉しみの一つです。

 

昔、インフルエンザに罹った後から鼻が利かなくなったことがありました。回復に1年くらいかかったでしょうか。その年の金木犀は匂いでは発見できず、目でようやく確認する始末。およそ能天気な私ですが、この時ばかりはもう二度と好い香りが嗅げないのか、と不安にかられたものです。好きなコーヒーも不味く感じ、それこそ味気ない毎日でした。

 

 
 
 

細い道を抜けてだだっ広い駐車場に出ると、雲や光を乱雑に描き殴ったような夕方の空が、電線や建物に邪魔されず広がっていました。

 

 ーやはり「いつか見た空」なんだよなぁ。初めて見てるのに…

 ー幼いころから空を見上げるのが好きだったんだろうなぁ、私は

 

正体不明の懐かしさに囚われながら、ふと、このあたりに住んでもう35年になることに思い至りました。

町に際立った変化は感じないけれど、それでもいつの間にか建物が建て替わり、畑が建売の住宅になり、スーパーやドラッグストアが新しく開店し、と、眠ってるような土地柄でも時は確実に流れ…

 

 ー住んでるといっても地域と関り薄いよなぁ。

 ー流れ者の系譜、漂泊の人生。

 

「ベッドタウン」とは言い得て妙です。 

なじみがあまりないから、いまだにささやかな発見があるとも云えますが。

それにしても、35年かぁ。