ブレーメンの芸術家と日本人芸術家がタッグを組んでの共同芸術展がブレーメンで開催されました。「ENcounter 縁カウンター」というタイトルが付けられていて、出会いと不思議な縁をテーマにした合同作品展なのです。

およそ20人の作家の、油絵や布作品、映像芸術、造形などユニークな現代アートがずらりと展示されました。

 

静岡県からの参加です。清水ようすけさんは、静岡浜松市の地場産業である着物の遠州線紬を用いてのユニークな作品を発表しました。着物の布地「紬」に色を塗って、模様を書き加えた独自の作品です。

これはドイツの煙突掃除をイメージしたものです。ドイツでは、煙突掃除屋さんは滅多に会うことのないことから、幸運のシンボルとなっていますが、こういうユニークな縁の発想を、帯de煙突アートに変えたのです。

細く長い煙突の姿は、人の熱意が煙となって、様々なご縁を生み出して空に向かい、自由に広がっていくという思いが表されています。

これは着物を宙に吊り下げたものです。ブレーメンに降り立つ高揚感と喜びを空間アートとして表現しています。

 

そしてこちらは、お題「教会」です。我々の過ちを、キリスト様は身代わりとなって十字架に張り付けになりました。人間の煩悩という黒い心がキリスト様のご自愛で白くなり、光とともに救いの世界へといざなわれる様子をイメージしています。

 

さらには、こんな和柄を思わせるような立体的な作品も飾られていました。

この細かい模様は手書きですよ。色の組み合わせといい、まとまりといい、京都の秋を浮き上がるように表現した力作です。これがプロの芸術家のデッサン力なのですね。

 

持塚三樹さんの油絵

環境汚染から再生していく植物を描いた意欲作です。湧き上がるパッションを抑えきれずに一晩で描き上げたというから驚きです。何という気迫でしょう。

持塚さんは映像と音楽の芸術「デジタルメディア」も出展しています。壊れゆく我々の地球環境を嘆いた作風で、見ていてとても胸が苦しくなりました。我々の心に訴えてくるというのも、作家のコンセプトがしっかりしている証ですよね。

 

 

ブレーメンの作家も負けてはいません。

陶芸作品が来場者の注目を集めていました。

 

スライムを思わせる黄緑色の焼き物ですが、なんと指が飛び出しています。器の中からゾンビがよみがえって助けを求めているような不気味さが漂っています。

 

これは鼻を取っ手にしたマグカップです。ユニークです。こちらを静観する人の顔に見えてくるからたまりません。デスク周りに置いておくと、なんだか上司に見張られているようで集中力が高まりそうです。

 

 

版画絵です。彫刻刀の力強いラインが特徴です。黒をベースにしていますが、黄色とオレンジ色組み合わせることで、より版画が強調され遠近感が高まります。湖畔に移る街並みがキレイだな。

 

これは布による造形芸術です。

 

麻布に太い糸でシンプルな線を模様にしています。ミニマムなアートですが、想像力を駆り立て、お部屋のインテリアとしてもしっくりきそうです。

 

 

 

こちらは静岡のお茶の箱を利用した作品です。筧有子さんの秀作です。

緑茶の香りがほんのり残っていて、和紙と天然染料によって染められた鮮やかな作品です。染料は植物性の天然素材のものを使っているそうです。連続した模様も、和紙特有の風合いによって微妙なにじみが生まれ、味わい深い作品に昇華しています。

 

 

青色はブレーメンで仕入れた染料、赤と黄色は静岡から持ってきたものだそうです。こちらに来てから完成させた芸術です。筧さんはハンブルグの芸大に留学していたこともあり、日本とドイツの絆がより深まるようにと願いを込めて仕上げたそうです。

 

 

伝統和紙に色を浸透させて、にじみと色むらの生まれる偶然を感じることができます。同じものは存在しないという多様性を喚起させる、とても面白い創作アートですね。

 

 

 

静岡の富士山を切り取った写真もありました。モノトーンの富士山ですが、ダイナミックで力強い印象です。

 

 

 

さて、作品展ではワークショップがあり、大人も子供も参加し、ミニアートを体験していました。

これは水彩画の色鉛筆をコマの中心に置いて、コマを回すことで自由な線を描くというもの。

水と色、そして回転という三つが組み合わさって、とてもユニークな線描ができました。カラフルなくるくるの線はお花のようになったり、宇宙空間のようになったり、みんなで描く摩訶不思議なアートの完成です。

 

 

ドイツ人アーティストの作品もユニークでした。

粘土細工のチョコレートバーです。形・色、ともにリアルに仕上がっていますね。

 

 

 

様々なアートが一堂に会した展覧会は、共同作品展ならではの魅力です。作家の個性が自信作となって並んでいます。作家の方と直接会っての交流も楽しめました。作品が出来上がるまでの軌跡を聞いたり、絵に込めた願いや思いを話していただきました。こういう生の情報があると、作品の見方が変わってくるのもいいものです。

 

私は絵心がないので、よけい、こういう秀作を見て感銘を受けるのが好きです。共同作品展をゆっくり鑑賞し、心の錆を取り払い、感受性を磨くことが出来ました。