美しい色彩の現代的な油絵で有名な日本人画家「知多秀夫さんの個展」がブレーメンのアトリエで開催されました。テーマは「Farbe ist Leben 色彩は人生」です。
聡明で博識で、でも気取ったところは全くなく、逆に気さくなおじさんという人柄も人気の秘密です。油絵では、大胆な色使いで人生のうつろいや喜び、出会いを表現しています。
彼の作品は、単に二色を組み合わせてあるだけなのに、光の加減で色の比重の見え方が変わってくるというユニークさが特徴です。絵の具がたっぷり塗りこめられているにも関わらず、透明感も表現されているから不思議です。これこそ、彼の画家としての技法なのでしょうね。
知多さんは、日本だけでなく、ドイツ、アムステルダム、フランスといった欧州、または中国や韓国、台湾でも個展を開催するエネルギッシュさを持ち合わせていて、彼の作品は世界中で高く評価されています。
ブレーメンでは、最新作20点が展示されていました。
これは今回の一番人気の作品です。まるで満開の桜を思わせるようなロマンティックさが醸し出されています。パテで分厚くピンクと緑を重ねてあって、まるでなまこ壁のように立体的に浮き上がって見えます。気分を明るくさせてくれる一枚です。恋をしたときの嬉しさや喜びを表しているようです。
これは、私が見たエーゲ海にそっくりです。コバルトブルーの穏やかな波と、赤茶けた砂浜のコンビネーションです。そしてはるか向こうに見えるのは青い空、水平線と空の境目が分らないようなエーゲ海の静かな海辺を思い出しました。
一足早く夏を感じさせる秀作です。
個展初日には、秀夫さんのお友だちの芸術家がシンバルの演奏を披露し、オープニングに華を添えました。
ジャズの手法で、中国の武漢から取り寄せたシンバルで不思議な音色を生み出します。ギャラリーはまるで異空間。作品のファンタジアが強調されるような独特のメロディーです。
宇宙空間のようなダイナミックさ、または瞑想音楽のような深く染み入る響き、はたまたスイスのお花畑にいるような穏やかな音色。初めて生で聞く楽器でしたが、とても印象に強く残りました。
知多さんはブレーメンで個展を開くのは2019年に続いて二度目ということもあり、すでにファンがいて買い求める方が数人いました。色彩は人生、一枚の絵画でも見る人の感性で幾通りもの物語や風景が重ねられます。それが知多さんのデッサン力なのでしょうね。「人生いろいろ」、私は思わず島倉千代子の名曲を口ずさんでいました。(ちょっと違うか?)
ところで、私は巻き寿司を差し入れして、開会を盛り上げました。
芸術家の集まりですので、巻き寿司の並べ方にも気を配ります。作品を損なわないように、見た目の美しさも大切です。
お友だちは、バラのパイを提供していました。なんと愛らしい!
スライスしたリンゴを赤ワインで煮込みバラの形に形成したアイデア料理です。緑のバジリコは見た目だけでなく、味のアクセントにもなっています。
個展のオープニングは、作者や来訪者との出会いだけでなく、こんな素敵なフィンガーフードとの出会いもあるから、嬉しいです。
さて、絵画の鑑賞は、美術館だけでなく、このようなこじんまりとしたギャラリーでも楽しむことができます。私ももう50代のおばちゃんですが、自分の感性が錆びないようにアートとの付き合いは大事にしたいと思っています。