前回の「工作系」は作り方は秘密にされておらず、専用の道具やキットも販売されています。
これがパズル系になると、何を使ってどうやって入れたのかと、手法に加え道具も解き明かさせるものになります。
作る側の立場からすれば、何を使えば何を入れれるのか、と知恵を絞っていくことになります。
狭義でのビン詰め不可能物体はこのパズル系のみを指しているかもしれません。
まずは「史上最強のパズルランド 芦ケ原伸之著 ベネッセコーポレーション」に以下のような内容があります。
アメリカのOMNI誌(1984年4月号)で、スコット・モリスが「不可能博物館」と題し、おかしな品物を紹介した。
そこには、ビンの中に入れられたルービックキューブ、梨、ネジの刺さった棒などが掲載されていた。
ルービックキューブはボブ・イースターの作品で、その作り方についても言及されている。
さらに不可能物体の公募も行っており、その際、コーラ瓶に1ドル硬貨、ゴルフボールが入れられるかと挑発していた。
その年(次の年、1985年5月号)にはその応募の結果が掲載され、
硬貨、野球ボール、デジタル時計、ルービックキューブが入れられたビンがあった。(下の画像)
さらに、公募には間に合わなかったが、(芦ヶ原氏は)コーラ瓶に卵を入れた。
と書いています。芦ヶ原氏の卵の話の続きは後で触れます。
最初の1984年の記事は日本版OMNIには掲載されておらず、1985年の記事は日本版OMNI1985年9月号に掲載されています。
おそらくこのOMNI誌以降、この記事に創作意欲を掻き立てられたクリエイター達によって新たな不可能物体が次々と生み出されていったと思われます。
ビンの中にも色々な物が詰め込まれてきました。
市販品があったものや本に載っているものを中心に以下に挙げてみましょう。
棒とネジ、釘、ボルトなど
市販品
●不思議ボトル、とってもいいちこ(東洋ガラス):木の棒にネジやボルトとナットが刺さっている
参考文献
●OMNI誌(旺文社)1984年4月号
●パズルその全宇宙 ジェリー スローカム, ジャック ボタマンズ 著、芦ケ原 伸之 訳 日本テレビ放送網:作り方も掲載
●パズル遊びへの招待 高木茂男著 PHP研究所:牛乳瓶の中にに釘の刺さった棒
●史上最強のパズルランド 芦ケ原 伸之 著 ベネッセコーポレーション
●大暴露 あの超有名人・企業が闇に葬りたかったすべて (ハヤカワ文庫) ウィリアム・パウンドストーン 著、田村 義進, 伊藤 文英 翻訳:作り方も掲載
●パズル・ミュ-ジアム (no.1) (NEKO MOOK 708) ネコ・パブリッシング:ボルトとナット
●パズラボ帖 No.6 PUZZLAB:不思議ボトル、とってもいいちこ
旭川ぱずるミュージアムHPにもグラスパズルのページに釘の刺さった木があります。
「ボルトとナット」はかなりポピュラーで製作方法も比較的簡単です。
高校の理科の授業で「モーメント」を理解するための教材として使われているのをテレビで見た記憶があります。
絵馬
市販品
●絵馬のびんに念仏(東洋ガラス)
参考文献
●悪魔のパズル ジェリー スローカム, ジャック ボタマンズ 著、芦ケ原 伸之 翻訳 日経サイエンス
●パズル遊びへの招待
●パズラボ帖 No.6 PUZZLAB:絵馬のびんに念仏
組木
市販品
●苦労すクロス、スーパー苦労すクロス(東洋ガラス)
●ビル・カトラーのビンクロス(東洋ガラス)
参考文献
●パズル遊びへの招待
●パズラボ帖 No.6 PUZZLAB:苦労すクロス
上の3つはあくまでもパズルで、中で組むだけです。それが難しいということですが。
しかし、クォーク1991年4月号の芦ヶ原伸之の記事には、
ビル・カトラーのビンクロスと同じ形の組木が入った牛乳瓶が載っており、これは芦ヶ原氏自身が作ったもので、6本の角材は全て同じ形だと言っています。
全て同じ形だと組めないはずなので、こっちは完全に不可能物体・・・、ということは、おそらくああなっているのでしょう。
●クォーク誌 1991/4月号
Eureka!のボトル
ベルギーの知恵の輪メーカーのEureka社のボトルパズルでボルトとピン、木の玉、金輪、組木がビンに入っている。
この辺りまではパズル色が強いですが、どんどん意味が分からなくなっていきます・・・
ボール色々
(野球ボールの画像はOMNI誌、テニスボールは旭川パズルミュージアムHPより)
市販品
●ホール・イン・ワン(東洋ガラス):ゴルフボール
参考文献
●OMNI誌 1985年5月号(日本版1985年9月号):野球ボール(マイケル・オーバーメイヤー作)、作り方も
●悪魔のパズル:ゴルフボール。ハリーエンが作ったとある
●Theメカニカルパズル130: 解いて嬉しい!集めて楽しい! 難解パズルにあなたも挑戦! (別冊ベストカー):ゴルフボール
●パズラボ帖5 PAZZLAB:ゴルフボール(ホールインワン:東洋ガラス)作り方のヒントも?
●パズラボ帖 No.6 PUZZLAB:ゴルフボール(ホールインワン)
旭川ぱずるミュージアムHP:テニスボール
参考文献
●クォーク誌 1982/11号
●OMNI誌 1985年5月号(日本版1985年9月号):ボブ・イースター作、作り方も
●悪魔のパズル:1981年にボブ・イースターが作ったとある
●史上最強のパズルランド:作り方もあり
●キューブパズル読本 秋山久義著 新紀元社
ビンに入ったルービックキューブは手品のグッズとしても売られています。
硬貨、時計
OMNI誌の記事にあるものは、ダニエル・ウォルター氏作で、アメリカではテレビでも紹介されて話題になったと書いてあります。作り方も書かれています。
参考文献
●OMNI誌 1985年5月号(日本版1985年9月号)
●大暴露(硬貨):作り方があるが、これでは説明しきれない。
昔、ディズニーランドのお土産でもビンに入ったコインが売られていたようです。
さらに、手品のグッズとして売られていたりします。
マジシャンが目の前でコインを入れるマジックでは、コインに仕掛けがあるはずです。
上のOMNI1985年5月号の画像には時計が入ったものもあります。
(画像は「悪魔のパズル」より。1枚目:スプーン、2枚目:左からメガネ、テニスボールとシューズ、トランプと南京錠、ゴルフボール、絵馬。右上にはルービックキューブ)
参考文献
●悪魔のパズル
「悪魔のパズル」には色んなビン詰めが載っています。
スプーン、メガネ、テニスボールとシューズ、トランプと南京錠、ゴルフボールはハリーエン作、ルービックキューブはボブ・イースター作とあります。
トランプの瓶詰めは定番ですが、ロックされた南京錠までついています。
南京錠はパズラボweShopでカンキン錠、ナンキン錠という商品が売られていました。
(画像は「科学館が教えるおもしろ自由研究」より)
ゆでタマゴはポピュラーな部類で、下にある本以外にも作り方も含めて多数掲載されていると思います。
科学系とも言えるかもしれません。
参考文献
●パズル&ゲーム 意地の悪い本 鬼瓦 宇太郎 著, 高木 重朗 著 ごま書房新社
●コロンブスの卵 トリック 遊び 実験 エディ・ランナース著/小西宏明 訳/磯田富夫訳/松本夏樹訳/藤本佳志訳 朝日出版社
●コロンブスより上手な卵の立たせ方 身近な科学の謎解き実験室 ガリレオ工房著 河出書房新社
●ついやってみたくなる不思議の本 (講談社+アルファ文庫) 日本社 (著)
●おもしろ化学マジック L.A.フォード/E.W.グルンドマイア著 秋山仁訳 白揚社
●大人のためのミステリー手品 芦ヶ原伸之著 PHP研究所
●科学館が教えるおもしろ自由研究(ニュートンムック) ニュートンプレス
では、玉子は茹でないといけないのかというと?
(画像は「クォーク 1986/4月号」より)
参考文献
●クォーク誌 1986/4月号
●史上最強のパズルランド
前述した「史上最強のパズルランド」の芦ヶ原氏が生卵を詰めた話ですが、その続きはクォーク1986/4月号の本人の記事と同じ内容となっています。
OMNI誌に間に合わなかったが作成に成功したという話ですが、クォーク誌では写真付きで掲載されています。
しかし、これは石膏で作ったフェイクであったことが後に暴露されています。
恒例のエイプリルフールの嘘記事です。
でもこの記事は特にオチが秀逸で読み物としてとても面白い(ので良しとする!?)
他にもネットで検索していると、ビンの中で棒に太い紐が結ばれたもの、知恵の輪、キャストパズルをビンの中で組み立てたものなど色々見つかります。
一体どうやって作ったのでしょう???