食の安全問題が新聞紙上を賑わさない日がないといっていいくらい日常的な感じになってきました。食料自給率が極端に低くなった日本において国内だけの監視だけでなく海外から入ってくる粗悪食料品について水際で食い止める必要が急速に高まっています。
国際分業は当然の流れなのでしょうが、すべての食品が安全に作られ安全な輸送経路で劣化や危害が加わらないということが前提になります。
一方で食料安保問題があります。すなわち国内でどれだけの食料をまかなえるかという量的問題です。食糧自給率問題です。
産業構造の変化でより所得が多い農業以外の職業への労働力シフトが完全に進んでしまったことによるものでもあります。米は昔から「字の示すとおり八十八の手間をかけて収穫できる」というほど労力を要するものです。畜産の場合でも一日も休むことはできません。他の農産物にしても同じような手間がかかります。他の産業と同等の収入を得ようとすれば大変なことです。「晴耕雨読」というようなスローライフは趣味領域にすぎないかもしれません。
日本は国際分業の中で先進工業国という選択をしました。産業構造の大転換です。アメリカやイギリス、フランスなどは先進工業国でもありながら農業国という選択をしています。国土と人口面で日本の進む道はこれしかなかったのかもしれません。
ここで輸配送の進化というウチデの小槌があったのです。アメリカでも南米でもアフリカからでもヨーロッパからでも以前では考えられなかった輸送費、早さでものを運ぶことができるようになりました。ほんとうに地球が一つになった感じです。この輸送網なくして今のような食料自給率では日本の胃袋は満たせなかったでしょう。
今、フードマイレージの考え方が普及しつつあります。遠くから運べばそれだけエネルギーを要します。温暖化ガスの排出量も多くなります。ただ価格面では生産コストの安いところから仕入れる方が輸送費を払っても安いというのも事実です。環境負荷を考えれば最終価格がいくらというよりも少し高くても近くの商品、突き進めれば地産地消という方向に進みます。ただこのためには国内の食料生産が今より大幅に増えることが必要です。
生活基盤、社会生活・・・、とにかく解決すべき問題が多すぎるようにも思います。
安全安心と世界の一体化、食糧自給率問題、所得再配分問題・・・、今回の食品事件は日本人にあまりにも大きなテーマを投げかけていると考えるのは私だけないのでないでしょうか?
今日のキーワード
“輸送距離は短いほどいい、拠点設計問題の考えを国の政策立案でも”