認知症高齢者の民事責任 | 向井幸一のブログ

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認知症高齢者が増加しています。自動車運転中の交通事故、線路内立入による事故、放火・失火等の事件が発生しています。認知症高齢者は重度の場合には刑事責任は免除となり、軽度の場合には限定責任になるとされています。一方で民事責任は刑事責任無能力者の行為により発生した損害は監督責任がある者が負うとされています。


そんな現状の中で3月1日に最高裁判所で注目の判決が言い渡されます。JR東海管内で起きた認知症高齢者の線路内立入により発生した事故により生じた損害賠償を誰が負担するのかという裁判です。

民法では監護監督責任を負う家族が賠償することになっており高裁の判決では同居の配偶者に支払いを命じています。


しかし民法が予定している刑事責任無能力者は未成年者、精神障碍者等を指していました。老老介護、独居高齢者、身寄りのない高齢者等は予定されていない時期に制定された法律です。高齢社会になって家族構成も大きく変化している現在にはそぐわなくなってきたのではないかと感じています。


認知症高齢者による線路内立入の死亡事故による損害発生は2014年の1年間で判明しているだけでも22件あるとのことです。今後はさらに増加していくことが予測されています。損害が発生した当事者が大手企業の場合には賠償請求を我慢するべきという意見もあります。しかし被害者が個人の生命・身体・財産に及んだ場合にも刑事・民事責任ともないので被害者に我慢しろというのは酷な気がします。


法律が現状に追いついていないと感じています。国が替わって損害賠償をするというような思い切った対応が必要になるのではないかと思います。

未曽有の高齢化に優しい社会になって欲しいと思います。