取材 | 向井幸一のブログ

向井幸一のブログ

高齢者住宅の管理運営をしている高齢者のブログ

最近、取材申込みが急激に増えてきました。テーマは「高齢者の移住」に関することです。専門誌に限らず一般紙からの取材が多く、関心が高いのだと感じています。私は学者でも研究者でもないので実務家としての回答しかできませんが現在の政府が考えている形態の高齢者の移住は少ないのではないかとお答えしています。アメリカのCCRCを目指すといいながら要介護高齢者施設を地方に増やすというような一貫性のない政策では実現性は乏しいと思います。


地方都市に高齢者施設をつくることにより若年者の雇用を創造するといっていますが現在の処遇ではインパクトはないと思います。一般給与所得者くらいの待遇がなければ雇用の創造には直結しないと思います。まずは介護職の待遇改善につながる介護保険制度改定が必要だと思います。また高齢者施設とそこで働く職員だけの街では教育、サービス業等が育つことがないので大規模な姥捨て山になってしまう危険性があるとすら考えています。


また地域包括ケアを進めていながら「住み慣れた町を離れる政策を同時に進める」ことに違和感を感じます。要介護度が高くなった方の生活環境の変化はADLを低下させることにもなりかねないと危惧しています。方言が分からない、郷土料理の味が異なる等は若い人たちの移動でもストレスになります。高齢期に過大なストレスをかけることは高齢者ご自身も望まないことではないかと思います。


自立高齢者であれば生活費が安い地域への住替え、温暖な気候の地域への住替えは発生しています。

自立高齢者に向けた新たなサービス業も始まっています。これらの住替えは自主的な住替えで将来に対する希望、明るさがあります。

一方で政府が進めようとしている要介護高齢者を地方の施設に移すということには高齢者本人の自主性はありません。行政サイドの事情によるところが大きいといえます。


首都圏の自治体もおそらく指をくわえて現状を放置することはないと思います。懸命に高齢者の住まい、施設の環境整備を図るものと期待しています。働くことができなくなった要介護高齢者は地方の施設に移すという自治は住民から受け入れられることはないのではないかと思っています。


高齢者ご自身が住替えたいと思えるような街づくりをすることが大切であると思います。

都市部、地方それぞれ環境は異なりますが高齢者も住民であることを再認識して行政サービスを提供するという最低限度の自覚をもっていただきたいと願っています。