アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018年版について思うこと | 皮膚科医 池田大志のブログ

皮膚科医 池田大志のブログ

このブログでは、自称“ベビースキンケア専門家”であり、長期の育休を経験した僕が、「ベビースキンケア」と「男の育児」を2大テーマに、普段見たり聞いたり考えたりしたことを、気の向くままに書いていきたいと思います。

つい先日、日本皮膚科学会よりアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018年版(最新版)が発表されました。

 

私はこれまで、このガイドラインが毎回更新されるたびに、私にとって最も重要な「ある事柄」が記載されていないことにひどくガッカリしていました(そのために皮膚科学会に「ある事柄」の掲載を訴えかけていました)が、ついに、今回の2018年版で、その「ある事柄」が掲載されるようになりました。

 

その「ある事柄」とは、『洗い過ぎないスキンケア』についての言及です。

 

具体的には、以下の文言が付け加えられました。

 

通常,皮脂の融点は 約 30°Cであり156),ぬるめの湯でも皮脂はある程度除去できると考えられることから,乾燥が強い症例や部位, 季節,あるいは石鹸・洗浄剤による刺激が強い場合には石鹸の使用を最小限とする.(日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018年版より抜粋)

 

これに続いて、以下の文言も記載されています。

 

逆に脂性肌や脂漏部位,軟膏を毎日塗る部位,皮膚感染症を繰り返す部位には悪化因子回避の目的で石鹸・洗浄剤を積極的に使用する.(日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018年版より抜粋)

 

つまり、石鹸の使用は「必要な状況に、必要な部位のみ」を基本として、それ以外では石鹸の使用は「最小限」でよい、ということになります。

 

私がこれまでずっと訴えかけてきた「洗い過ぎないスキンケア」の大切さが、ようやく日本皮膚科学会で認められたように感じ、嬉しく思いました。ただ、石鹸の使用は「最小限」と書かれており、「不要」とまでは書かれておりません。不要と断言してしまうと、そのために何かの肌トラブルがあった際に学会側に責任が生じることを恐れたために、それを濁すように「最小限」と記載したのではないかと私は推測しています。いずれにせよ、私が提唱している「洗い過ぎないスキンケア」がようやく定着してきたことを感じることができました。

 

ご興味のある方は、ぜひアトピー性皮膚炎診療ガイドラインに目を通してみてください(どのように変わったか見比べながら)。

 

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018年版

https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/atopic_GL2018.pdf

 

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版

https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/atopicdermatitis_guideline.pdf