普段あまり意識していないが2016年現在、日本の労働力の実に40%近くが非正規だという。
非正雇用の問題の本質は意外に議論されておらず、いかに非正規雇用を減らそうか、という議論だけが聞こえてくる。 非正規雇用を減らすのは実は簡単で、「非正規」「正規」という概念を無くしてしまえば良いだけだ。 実際アメリカでは、full time / part time か exempt / none exempt (裁量労働か否か)しか区別がない。 もちろんそれはそれで違った諸々の問題は抱えているが、少なくとも労働者側には分かりやすいし、なによりも不公平感が少ない。
簡単に首を切れるシステムはよくないと思うかもしれないが、実はそうでもない。 もしも日本の会社全てが一斉に、こぞって首切りを始めれば、労働市場にありとあらゆる方面から人材が放出される。 これは人を雇いたいがなかなかマッチした人が見つからず、雇用に踏み切れない会社にとっては選択肢が広がるので良い事だ。 首を切られた方も次の仕事がみつけやすくなる。 会社側は簡単に首が切れるのだから、雇用する際も必要以上に慎重になる必要がなくなる筈だ。 子供の頃に遊んだ 「フルーツバスケット」 同様、一斉に多くのひとが会社を放り出され、また一斉に仕事を探しに動く。 仕事の合計数が同じである事が前提だが、より多くの人が極めて短い時間で転職を完了させる事が出来る。
言葉としてはあまり聞かなくなった 「窓際族」 だが、今も確実に存在する。 会社には本来期待されていた能力を発揮できず日々悶々としている 中高年層の 「正社員」 が沢山いる。 会社側はこの人たちを確実に持て余しており、そこには雇用契約があるだけでお互いlose - loseの関係になっているだけだ。 日本は会社が簡単に労働者を解雇出来ない仕組みになっているので、会社側はどうすれば自主退職してもらえるのかあれこれ考えるが、一度 「会社」 という ムラ社会から放りだされると次の村にたどり着くまで相当苦労する事を知っている社員は仮に自分の能力に自信があったとしてもそう簡単には自主退職してくれない。 論外だがこのシステムをいいことに出世をあきらめ、周りからどう思われようと徹底的に仕事をしない輩も確実に存在し、肌感覚では増えていると思う。
そもそも同じ会社で同じような仕事をする事は一部の専門職を除いて、その個人にも会社にもおおきなメリットは無いと考える。 川の流れがなくなれば水が澱んでしまう様に、会社内でも人員の流動性は大切だ。 日本の、とりわけ中小企業が国際競争力を失いつつあることの要因のいくつかにこの問題があると思っている。
国がやる事はそれほどない。
① まずは各種労働法を改正して企業が労働者を解雇しやすくする。
② 次に失業手当の発行を簡単かつ 「明るく」 行えるシステムを作る。 (受給金をもらう為にハローワークに行き、あそこの雰囲気に晒されるだけで自分がクズの様に思えてくる)
③ 全ての申請書から 「勤め先」「勤続年数」という記入欄を排除する法律を作る(現在の年収、月給は諸々の判断に必要なので記入させる)。
以上である。 そもそも、雇用関係の原則に戻れば、資本家(企業)は労働力に賃金を払い、労働者は労働力に見合った賃金を受け取るだけの話だ。 質の高い労働力を確保した企業が発展し、質の低い労働者しか確保出来ない企業が衰退する。 質の高い労働者は大金を手にし、質の低い労働者は大金を手に出来ない。 金融も含めて全ての事柄の判断を市場が決めている様に、人材も市場の判断に任せれば良い。 いまこの世に存在するシステムの中ではこれが恐らく一番公平だ。