注意 当、二次創作小説(シナリオ)を初めて読まれる方は先にこちらをごらんください。
あなたと始める物語は。16
〜 next stage ~
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《ダーリンは芸能人》二次創作
スマホに届いた夕食の要不要の連絡を確認し、私を含めた3人分の夕食の材料+αを両手にぶら下げて家に到着。
冷凍室に入れる必要があるものだけを急いで収納したら外に干しておいた洗濯物を取り込む。
お天気が良くて更に少し風があったからほとんど乾いてはいるものの、厚手のものに冬特有の冷たさが感じられるために、念の為に衣類乾燥機に掛けることにした。
タイマーをセットしたら今度は夕食の準備だ。
帰宅時間がバラバラである彼らの食べたい時にここですぐに食べられるようにしておくのが私の仕事。
作った食事をそれぞれが希望する時間に部屋へ運ぶのは効率が悪いということで、この部屋のダイニングルームの部分のみを開放し、私の時間の許す限り食事の提供をする。
元々彼らがグループとして纏まって活動していたデビュー当時は揃ってここで食事していたらしい。
個々の活動がかなり増えてきてからはそれぞれの部屋で食事をするようになっていたが、私という炊事労働力を得たのなら再びここで食事をするようにしたいとのことだった。
―――いま私が居るこの部屋は、Wave の幻の6人目のための部屋だったそうだ。
セキュリティの面やプライバシーを守る点からワンフロアを丸々借り上げた以上、 Wave とは全く関係ない人に貸すことが難しいために空けたままにしていたらしい。
その6人目は、デビューを目前にして退所させられたのだとか。
私には理由はさすがに明かさなかったが、一般人なら見過ごされるようなことでも、デビューさせるにはマズい状況だったことはスタプロの体質を知っていれば分かる。
人気者商売も楽じゃないなと、読んでいる記事とは全く関係ないことを考えながら彼らの帰宅を待っていると。
インターフォンの音が鳴ってひと呼吸分のタイミングを空けて、一磨くんと義人くんがやってきた。
「おかえりなさい」
「愛優香さん、ただいま」
「ただいま」
「すぐ、ご飯にするね」
そう言ってキッチンに入った時だった。
「あの、愛優香さん…!」
「ん?」
「えーっと、…これ」
一磨くんが可愛らしいアレンジメントを、義人くんがケーキの箱を差し出した。
んん?
今日は何かの日だっけ??
そんなことを考えてたら受け取るのがワンテンポ遅れちゃって。
それを察した一磨くんが口を開いた。
「えーっと、ハーフ・アニバーサリー。 愛優香さんが来てくれて半年の記念日、かな。
本当は明日だけど俺と義人居ないから」
「それで、今日」
少し照れながらそういう二人に、私がここに来てちょうど半年になることに気付いた。
「あっ、ホントだ!
ありがとう、すっごく嬉しい!!」
「こちらこそ、本当にいつもありがとう。 出来たら、これからもいてくれると嬉しい、です」
「え?」
「だって愛優香さん、あの時の話だと次の仕事が見つかるまでってことだったし」
そう言えばそうだった。
会社にいた頃は好きな仕事で主任補佐にまでなってたこともあって、私にここの仕事が続くのかと不安な感情は拭いきれなかった。
少しは料理が出来るもののレパートリーが多いわけでもなく、それこそ結婚してから料理教室に通うつもりだったから、自分でもどこまで出来るのかと不安だった。
決まってからはレパートリーを増やそうと料理本やブログを参考にしたりはしたけど。
…そっか、私、またここに居てもいいんだ。
実際のところ職探しは難航してて、なおかつこの生活が楽しくなってきてたから、そう言ってもらえるのはすごく嬉しい。
「ありがとう。 じゃあ、もう少しだけ、よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げると二人は「こちらこそ」と返してくれた。
それから私たちは普段と代わり映えしない普通の食事をして、コーヒーを飲みながら今日あったこととか彼らの明日からのロケのこととか、他愛のない話をして過ごしたのだった。
〜 to be continued 〜