注意 当、二次創作小説(シナリオ)を初めて読まれる方は先にこちらをごらんください。
あなたと始める物語は。17
〜 next stage ~
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《ダーリンは芸能人》二次創作
―――ピピピピッピピピピッピピピピッ…
何度目かの短い電子音で眠りから緩やかに目を覚ます。
今日は花屋さんも不動産屋さんも、そして寮母としてのお仕事もお休みで、いつもより遅めに起きた。
「さーて、今日は何をしようかなー」
朝の支度をしながらそう独り言つ。
前の仕事をしていた時は激務だったためにお休みの日はもっぱら頭と体を休めてたけれど、今はそんなことをする必要がなくて、どこへ出掛けたいという気持ちの方が強い。
しかも平日だから人気のあるお店なんかは待ち時間が短縮されているはず。
…なんだけど。
「うーん、でも、お一人様じゃなー」
一人でお店に入るのは割りと平気なんだけど、人気店ならなおさら平日という穴場を狙って訪れるカップルが多いかもしれない。
そんな中にお一人様はちょっとキツい。
そりゃあ行ってみないと分からないけど。
と、スマホで行き先を探すもなかなか踏ん切りがつかなかった。
気が付いたときには既に1時間が過ぎていて。
このままじゃ1日が過ぎてしまう、と、兎にも角にも外に出ることにした。
クリームファンデと色控えめなオーキッドピンクのルージュだけのメイクをし、髪は一つに結わえる。
オーソドックスにアイボリーのタートルネック厚手ニットとオリーブグリーンのセミワイドパンツを合わせ、チャコールグレーのウールコートを羽織って姿見鏡で全身を確認。
そしてボルドーカラーのバッグを持って出発。
エントランスからアプローチを通り抜け、前の道路に出て少し歩いた時、眼の前のバス停に停まったバスに何故か乗ろうと思った。
行き先を見るとそれは海浜公園へ行くバスで、終点まて確か50分近く掛かるはず。
ま、いっか、と気まぐれでそれに乗ることにした。
今朝は雲一つない晴天のために放射冷却現象で冷え込んでいるけれど、外気から少しだけ遮断されるバスの中はほんのりと暖かく感じる。
窓から射し込むお日さまの熱で身体が温められ、バスの振動も相まって10分もすると眠気が襲ってきた。
ウトウトとしてるうちに本気で眠ってしまって、気が付いたときには終点の1つ手前。
乗車したときにはほぼ埋まっていた座席も、平日だとバスで海浜公園へ行く人は少ないのか、ほとんどの席が空いている状態だった。
終点で降車するとすぐに潮の香りがした。
この海浜公園に来たのはかなり前で、あれから変わったところはないのかなと周りを見渡しながら岸壁にほど近い遊歩道を散策する。
家の周りとは違って海風が少しだけ強く吹いていた。
と、しばらく歩いていくと人だかりを発見。
ツアー観光客かと思ったけれど、若い女性がかなり多い気がする。
さらに少し進むとレフ板やら何かの機材やらが見えて、何かの撮影に来てるのだと理解した。
完全にそれを避けようとすると本当に遠回りになるので、別に興味はないんだけど…と思いつつ、すぐに終わりそうなら待つか、とちょっとだけその人だかりの後ろから覗いた。
と。
「!!!」
人だかりの向こうに居たのは京介くんと亮太くんだ。
そして大勢の撮影スタッフやチーフマネージャーの飯田橋さん、それから見たことのない俳優さん。
何かの撮影をしているようで、演者たちの衣装を調えたりメイク直しをしたり何かを確認したりしている。
すぐに終わりそうになく、見てても仕方ないとそこを離れることにして大回りを覚悟して歩き始めたとき、ポケットの中のスマートフォンが着信を知らせたのだった。
✽✽✽✽✽✽✽✽
ドラマのロケ中。
ワンシーンのみ出演するはずの役者が来られないと連絡が入ったのは幾つかのシーンを撮ってからの僅か数分後。
慌てて他の事務所に打診するも時間が迫りすぎててすぐに来られるような俳優はおらず、スタッフたちは大わらわだった。
京介には次の仕事があるために30分以内に開始する必要があったのだ。
「インフルで来られなくなった…ってさー、もっと早くに分かってただろっつーの。
代役、見つかんなかったらどうなるんだろ」
「15分以内に来いって無茶振りなければ居るんだろうけどね」
そう言って、スタッフから差し出されたペットボトルの水を飲み、喉を潤す京介。
ふと人だかりの中に愛優香が居るのを見つけた。
「………あれ? 愛優香がいる」
「あーちゃん? え、どこ??」
「あの人だかりの中」
指差しすることは出来ないため、視線だけでその方向を指す。
が、亮太は見つけられなかった。
「…………分かんねーよ」
「は? 向かって左の、端っこの方だよ。 濃いグレーのコート着てる」
京介にそう言われてもう一度見てみると、ようやく見つけることが出来た。
「あ、ホントだ。
よく見えたね? 京介、コンタクト変えた?」
「いや? いつものだけど」
「……マジかー…」
「?」
「いや、なんもー」
二人がそんな会話をしている間にも撮影続行の可否が話し合われている。
たったワンカットとは言え、話の筋からすっ飛ばすわけにはいかないシーンであった。
その時、チーフマネージャーの飯田橋が京介たちの会話を耳聡く聞きつけ、その場所を離れようとする愛優香を見つける。
と同時に、スマートフォンを取り出して彼女に電話を掛けるのだった。
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〜 to be continued ~