注意 当、二次創作小説(シナリオ)を初めて読まれる方は先にこちらをごらんください。
あなたと始める物語は。14
〜 next stage ~
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《ダーリンは芸能人》二次創作
亮太くんたちが出ていってから1時間後。
「おはよー…」
メンバーの最後のひとり、中西京介くんが室内着のまま寝ぼけ眼を擦りながらやってきた。
wave のセクシー担当と言われているだけあって寝起きの様子も何だか男の色気を漂わせている。
………が。
初めの頃は年下相手に恋する乙女よろしくトキめいてたけど、半年経った今ではなんとも思わなくなった。
慣れとは恐ろしいものだ。
「京介くん、おはよう。 すぐ食べる?」
「先にコーヒー…」
「いつも言ってるけど空きっ腹にブラックは良くないわよ?」
「んー…」
「今日はカフェオレにしようか?」
「んー…任せる……」
「はいはい」
真夜中をはるか遅く過ぎて仕事から帰ってきたらしき彼は、生返事をしながらダイニングテーブルに突っ伏した。
仕方ないなぁと思いつつ、挽いたコーヒーの粉をフレンチプレスに入れてお湯を注ぐ。
キッチリ時間を計って抽出した濃いめのコーヒーと温めておいた牛乳をカフェオレボウルに注いで彼の前に置いた。
突っ伏した上半身をのっそりと起こし、それを両方の手で持ってゆっくりと飲み始める。
睡眠時間わずか2時間と推測し、これじゃあすぐに食べられそうにないなと思った私は京介くんに提案した。
「お腹に入りそうにないなら雑炊にする? それとも、おにぎりにして車の中で食べる?」
「……雑炊にして…」
「了解」
ご飯1杯分と一人分より少し多めのお味噌汁、焼き上がった西京漬けのほぐし身を小さな土鍋に入れてグツグツと炊く。
その匂いに触発されたのか少しすると目が覚めたようで、彼はゆっくりと上半身を起こし、キッチンカウンターに置いてあるリモコンに手を伸ばしてTVを点けた。
ちょうどその画面には来年1月から始まるドラマの制作発表会が映し出されていて、そこに京介くんの姿を見つける。
ここ連日、彼の食事時間がバラバラだったのはこれのためだったのだろう。
それにしても、TV画面の中の京介くんと目の前にいる彼が同一人物に見えないのは私だけだろうか。
「ONとOFFを使い分けてるって言ってよ」
「なんで考えてることが分かったの?」
「そんな顔してた」
土鍋に入った雑炊をご飯茶碗によそい、木製スプーンで掬った雑炊を冷ましながら食べる京介くんはそう言った。
これまで表情の変化が乏しいと言われることが多かった私だけど、たくさんの人と接することが多い芸能人って表情を読み取るのが巧いのかしら…。
「ごちそうさまー。
愛優香ぁ、ハミガキしたいから洗面台使っていいー?」
「えっ、ハブラシ持ってきてないでしょ!」
「愛優香のを使えばいいじゃん」
「不衛生! マジでやめて!!!」
本気でそうするとは思ってないけど。
からかってるだけだとは思うけど。
たとえこれが親子間でも兄弟姉妹間でも想像するだけで鳥肌が立つ…。
「そーんなこと言ってたらキスなんて出来ないじゃーん」
「それとこれとは話は別!」
「ちぇー」
この会話、いったい何度目…。
使ってない歯ブラシ、置いておくべきだろうか。
いやいや、洗面所はパーソナルスペースになるんだから立ち入り禁止領域にしてたんだっけ。
「ほら、仕事遅れるわよ!」
「はいはい。
…あ、今晩もメシ要らないから」
「了解。 でもちゃんと食べるのよ?」
「そう思うなら愛優香が弁当作って」
「バカ言わない」
「あはは。
じゃ、いってきまーす」
ダイニングルームに入ってきた時とは違う顔をして京介くんは出ていったのだった。
〜 to be continued 〜