創作◆南の島にてwith三池亮太13【完】★《ダーリンは芸能人》二次創作短編 | 二次元のカレに逃避中♪

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南の島にて with 三池亮太 13

~ Southern Island's requiem ~

《ダーリンは芸能人》二次創作短編






白い靄は徐々に光を失い、段々と濃淡が付いて人の形となっていく。


『鞠子、さん…?』

『はい…』


私の口から出される別の人の声に、私自身が混乱する。

が、ややあって、その声の主が姿を現した。


『この人の言う通り…裏切ったんじゃない…。 裏切るはずもないでしょう…? あの夜、私たちは夫婦になったのですもの…』

『しかし、現に貴女は戻ってこなかった!』

『それは…』


そうして『彼女』から語られたのは、日本へ向かう船での出来事。

連合軍が近くの島にいる自国軍を殲滅させたという情報が入ってきてから成年男子を除く婦女子老人の本土への疎開が始まるも、この島で生活の基盤を確立させていた人は本土疎開に乗り気ではなかった。

ただ、彼女はある病に冒されていたために、それが深刻化する前に第1陣で日本に戻ることになる。

次に会える日を胸に暫しの別れを告げ、彼女はその船に乗船した。

が、本土への海路の途中で連合国軍の爆撃に遭い、乗っていた船は沈没してしまったという。


『あなたと約束したのに……ここに帰ってくることが出来なくなった……』

『何てことだ…民間人が乗った船を爆撃するなど…』

『帰ってきたかった…清吾さん、あなたのところへ…』

『鞠子さん…』


愛し合った二人が理不尽な形で引き裂かれる、これも戦争が犯した一つの罪というべきなのだろう。

それぞれが死を迎えた場所を、それどころかお互いに亡くなったことすら知らずにいたとは。

ただ、それを理解したからなのか、二人の霊は私と義人くんから離れていった。


『だけど、体は滅んでもあなたとこうやって再び会えるなんて…それだけでも』

『貴女と祝言を挙げることが出来なかったのは心残りだった…。 もっとも、貴女のお父上に赦しをいただけていたかどうか、もう分からないが』

『父は…喜んでいましたよ…。 私が幸せだと感じられるのならそれでいい、と』

『そうか…』


幸せそうにも見える反面、少しだけ寂しそうな表情の二人。

祝言という言葉が聞こえてきたけれど、もしかしてそれが…?


「亮太くん」

「ん?」

「なんか…ドラマかなんかでなかったっけ…? 亡くなった人同士の結婚」

「そんなのあったっけ?」

「ドラマじゃなくて、かなり昔に放送されたドキュメンタリーだよ」

「一磨さん」

「内容は詳しくは憶えてないけど。 確か、冥婚…とか。 検索してみよう」


そう言って一磨さんがスマホを取り出して調べてくれた。

冥婚。

死後婚とも言われ、未婚で亡くなった子どもを親が憐れんで、人形や絵などを用いて架空の相手と結婚させるという習わしだそうだ。

始まりは古代中国だったらしく、現在の日本でも風習として残っている地域もあるらしい。


「へぇ、絵にして奉納するところもあるらしいね」

「冥婚の正しいやり方なんて分からないけどこのままじゃ気の毒過ぎる。

 何とかならないかな」

「…ホント、お人好しだね、海尋は」


亮太くんは私が言ったことに呆れながらも、小道具スタッフの人に事情を説明し、木の板や紙、描画道具を貰ってきてくれた。

それから載ってあったやり方をマネて、スタッフさんからアドバイスをもらいながら二人の婚礼衣装の絵を描く。

どうか向こうの世界で結ばれますようにと、亡くなった二人の幸せを願いながら。


『ありがとう…』


そうして二人は出来上がった絵を見て、嬉しそうにも見える表情を浮かべて消えていったのだった。




翌日。

少々寝不足気味ながらも午前中の撮影を無事に終えた私たちは、島にある神社の位置を教えてもらってそこに向かった。

過去の日本がこの島を統治していた際に、本土を離れた人々の心の拠り所として神社を建てたそうだ。

今でも分祠として成り立ってはいるが、神主さんのような存在は居ないらしい。

それでも島に暮らす人たちがお詣りに訪れるらしく、新しいお供え物がチラホラとあって、私たちはその一画に絵を置く。

全員で手を合わせて、再び二人のことを祈った。

そして、その帰り道―――。


「海尋ちゃん、オカルト系めちゃくちゃ苦手って言いながら大丈夫だったじゃん」

「えっ」

「翔ちゃん!」

「翔、余計なこと言うなよー」

「え………あっ…………」


翔くんの言葉に、私は自分が苦手だったことを思い出して目を回して倒れた。

その後のことは覚えてなくて、気が付いたのはマイクロバスの中だった。

どうやら亮太くんがずっとお姫様抱っこで運んでくれたらしい。

彼の慌てっぷりから何かを察したスタッフさんも居たのだとか。

それでも、ちゃんと公表するまでは口を噤んでくれるらしいけど。

それから更に数日後、この島での撮影は終了した。

日本での撮影がまだ残っているのでクランクアップではないけれど、『とりあえずお疲れさま会』なるパーティーが開かれ、お互いに仕事を労い合う。

そのパーティーの途中で、亮太くんは私を連れて抜け出した。

辿り着いたのはこのホテルにある小さなチャペルで、窓からは南の海が一望出来る。

その海には太陽が沈もうとしていて―――。


「すごい……!」

「館内紹介に載ってたけど、思った以上だね」

「うん…」


二人ともそれ以上の言葉は出なくて、ただ窓からの景色を見つめる。

太陽が半分ほど水平線の向こうに隠れたとき、亮太くんが口を開いた。


「海尋と出会えてよかった」

「…私もだよ。 亮太くんと出会えてよかった。 心からそう思うよ」

「いつか…こんなところで式を挙げたいね」

「! 亮太くん…!」


彼の言葉が嬉しくて、私はその胸に飛び込む。

ちゃんとした誓いの言葉を告げるのはまだ先だけど、どんな苦難があろうとも、私たちは二人で乗り越えていくことを約束した。

完全に海の向こうに沈んだ太陽の代わりに、夜空に瞬く数え切れないほどの星が私たちを見守っていた―――。










―――後日談―――。


誰かが投稿したのか、今回経験したことが《世にも奇妙な、本当にあった怖かった話》に取り上げられることになった。

清吾さん役に京介くんが名乗りを上げ、体験した女優として是非とも私を起用してと彼から希望されたけれど。


「ぜぇーーーーったいダメ!!!」


と亮太くんが大反対してる。

その理由は、


「アイツ、大手を振って海尋ちゃんに絡むつもりなんだよ! 絶対に許さない!!」


―――ですって。

それともう一つ。

ドラマでの義人くんが色気を醸し出してると、恋愛系ドラマのオファーが激増してるのだとか。

当の本人は全くその気がなかったし、あれは清吾さんが憑いていたからこその表情だったからって焦っているらしいけど。

それでも、義人くんの演技って元から評判はいいんだし、恋愛のノウハウについては京介くんからレクチャーしてもらえばいいのではと私は密かに思ってるんだけどな。


「海尋ちゃん、帰るよー」

「はーい」


ドラマの放映も終わって、私たちは世間に向けて恋人宣言をした。

これで堂々と手を繋げるようになった私たちはいまとても幸せだ―――。



〜 end 〜