創作◆Staticeの花言葉とともに with 中西京介92 | 二次元のカレに逃避中♪

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主に、SNSアプリの乙女ゲームについてのレポ、および携帯恋愛ゲーム《ダーリンは芸能人》(LoveDuetを除く)をベースとした妄想2次小説を書いてます。※PC推奨です
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Staticeの花言葉とともに with 中西京介92


~ダーリンは芸能人・妄想2次小説43~

 

CM撮影は本当に1日がかりとなった。

新作発表会で流す30秒バージョンをはじめ、店頭で流す60秒バージョンや通常の15秒バージョンを4種、果ては屋外広告用スチルを計3枚と今まで経験したものよりはるかに多い本数を撮ったのだ。

根本的なコンセプトは変わらないものの少しずつ観点とシナリオを変えていくというスタイルで、その都度ヘアメイクのニュアンスが変えられていたためだ。

全てを撮り終えたあとは本当にぐったりで、だけど香月さん総監修のもと行われた撮影はその疲れも心地よいものと感じるほどだった。

しかしながら1つ目のブランドでこれほどたくさんの本数を撮ったということは、2つ目の分も合わせるとかなりの数となる。

で、とりあえず今日の撮影はこれで終了だ。

帰る準備をしているとき、上条さんがそばにやってきて労いの言葉をかけてくれた。

 

「お疲れさまでした、紫藤さん」

「あっ、上条さん。

 上条さんこそお疲れさまでした」

「次は明後日の夜に都内でということになってますので、よろしくお願いします」

「こちらこそです」

「…それで、あの」

「はい?」

「夏目からこれを預かってきました」

「?」

 

上条さんから手渡されたの薄桜の色をした封筒だった。

宛先も差出人も書かれていなくて、私は頭を傾げる。

 

「これは…?」

「…紫藤さんは思い出したくないでしょうけど、…岡本の妹さんから夏目が預かったそうです」

「!」

「夏目もお渡しするのを躊躇ったそうですが、妹さんがかなり憔悴してるらしくて。

 無責任かもしれませんが、とりあえずお渡しするだけお渡しして、読むのは紫藤さんに任せることにしたと」

「そう、なんですね。

 ……これ、京介くんに見せても?」

「その辺りも紫藤さんにお任せします。 読みたくなければ捨ててしまっても構わないと言ってました」

「わかりました。

 上条さん、ありがとうございます」

「いえ。

 では私たちは後片付けが残ってますのでこれで」

「はい、お疲れさまでした」

 

お互いに挨拶をして、上条さんは現場へと戻っていった。

岡本さんの自白とマナミさんの出頭による自供で一連の事件は完全に終結していた。

だけど当事者以外の周りの人たち、特に岡本さんのご家族の心に大きな傷を残してしまったのは確かだ。

中でも、前に聞いた夏目さんの話だと相当なお兄ちゃんっ子だったという継妹さんの心は穏やかではないはず。

それを考えると内容を見るのにも少し勇気がいる。

私は手にした封筒を少し眺め、かばんの中に入れた。

部屋を出ると撮影班はまだ撤収作業をしていたが、私は香月さんから手配されたハイヤーに乗って先に帰ることになった。

私ひとりで手紙を見るのは勇気がなくて、やはり家に戻ってから京介くんと一緒に見ることにした。

 

「大丈夫? 先に読もうか?」

「ううん、一緒なら大丈夫だと思うから…」

 

ペーパーナイフで封を切り、京介くんと並んで手紙を開く。

岡本さんの罪の軽減を嘆願するものかと思っていたけれど、そういうことは書かれていなくて。

彼が私たちに対して大きな罪を犯してしまったことを、身内としてただひたすら謝罪する内容だった。

その中で岡本さんが田所家の犠牲になったというのがあったのだけど、それは『継妹の安全を守るために岡本家に入ったのでは』という夏目さんの推測の答えを指しているのだろうか。

 

『岡本の家の人たちに振り回されたとはいえ、兄の罪はとうてい許されるものではありません。

 兄の罪は、その家族である私たちが精一杯償っていきます』

 

最後にはそう締めくくられていた。

事件を起こした血の繋がらない彼を、田所家の人たちが『家族』としてサポートしていくというのだ。

それは岡本さんがどれだけ彼女たちに愛されているかを示しているのだろう。

反対に、加害者となってしまったことで岡本さんは婚約を破棄され、さらに一族からはおろか、実の父親までもが見放したと聞く。

もっともその父親は今回の件で過去の悪行が暴かれ、社長の地位も危ないのだとか。

そして、私たちの前に姿を現した後に自ら出頭したマナミさん。

私を狙って局の大道具倉庫で荷崩れを起こさせた件と地下駐車場で私を轢こうとした件で出頭した彼女だけど、その全ての行動は京介くんへの想いと私への強い妬みによるものが原動力となっていたということだった。

 

『自分は行く道を理不尽に捻じ曲げられたのに、彼女は成功を手にして京介くんの傍で笑っている』

 

自供している中でマナミさんはそう言ったらしい。

私が成功しているかどうかは不明だけれど、たくさんの困難を乗り越えて京介くんの傍で笑っていられるのは本当に幸せだと思う。

それが彼女の不幸の上に成り立っているものだとしても、そう感じることは紛れもない事実。

そしてあの日、私たちの目の前に現れて、結局は言えなかった真実――週刊誌に吐露した過去がほぼ全て実際に遭ったという事実――には、やはり京介くんは顔を曇らせた。

岡本さんやマナミさんの罪がどんなものになるのかはわからない。

けれど、私と京介くんが最終的に願うのは二人にも幸せになってほしいということだった。

 

 

~ to be continued ~