創作◆Staticeの花言葉とともに with 中西京介68 | 二次元のカレに逃避中♪

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主に、SNSアプリの乙女ゲームについてのレポ、および携帯恋愛ゲーム《ダーリンは芸能人》(LoveDuetを除く)をベースとした妄想2次小説を書いてます。※PC推奨です
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当《ダーリンは芸能人》二次創作を初めて読まれる方は、必ず先にこちら をごらんください。
 
 
 
Staticeの花言葉とともに with 中西京介68
 
~ダーリンは芸能人・妄想2次小説43~
 

 
 
「お前たちのせいでオレは…!」
 
かなり激昂しているらしく、いまにも飛びかかってきそうだ。
 
「アイツ、目がいってねぇ?」
「ちょ、ヤバすぎだよ……!」

男の怒声に反応し、ナイフを目にした局のスタッフさんたちが悲鳴を上げながら逃げ惑っている。

「海尋、後ろへ」
「きょ…京介くん……」

この騒ぎの中、京介くんがスッと前に立ってその背に私を隠した。
騒ぎを聞いた香月さんと来住さんが駆けつけてくれるが、刃物を持って唸るように威嚇する相手に為すすべもなく戸惑ってるようだ。

「お前らが余計なことをしてくれたせいで俺はなぁ……!」

相手の言い分は完全に逆恨みだった。
自分は最大手の芸能事務所社長の身内であるから何をしてもいい存在である。
自分の許可なく代役を入れて撮影するのはあり得ないことで、それを社長に言いつけるのはもっとあり得ないことだ、と。
内容は100%言い掛かりで、今回の件で社長から謹慎を言い渡されたそうだ。
それにしても、どうやったらこんな勘違いな思考になるのだろう?
事の始まりから全て自分の行動が招いた結果だというのに。
そんな冷めたことを考えてる自分がいて、男が大声を出しながらナイフを振り上げて突進してくるのをただ見ているだけで―――。

「海尋、逃げろっ!!」
「っ!」

京介くんの声に我に返ると同時に、逃げなきゃと思いつつもその恐怖で足が動かなくなり、思考回路が停止しかけたとき。
香月さんと来住さんの後ろから誰かが飛び出してきたのが目に入った。
その誰かは男を羽交い締めにして動きを止めたあと、ナイフを持った手を後ろ手に捻り上げたかと思うと一瞬にして床に押さえ込んだ。
その時に被っていた帽子が落ちて―――。

「岡本さん…!」

ものの見事に体術で男を押さえ込んだのは、警備服を着た岡本さんだった。
 
「は、離せ…! 離せぇぇぇ!!」
 
岡本さんに取り押さえられた男はじたばたとしているが、体格の差もあってか足をばたつかせているだけだ。
そこまでの流れるような行動にただ茫然と見入っていた。
数秒ほど遅れて他の警備員の人たちも集まってきて、数人がかりで暴れる男を連行していく。
岡本さんは床に落ちた帽子をパンパンと掃って頭にかぶり、その場にいた人たちに一礼して、先に行った警備員さんたちを追うようにその場を離れた。
 
「海尋…! 大丈夫か!?」
「え…、あ、う、うん…。 大丈夫…」
 
心配そうに駆け寄ってきた香月さんと来住さんの言葉に返事をする。
 
「しかし、あの警備員すごいな。 一瞬にして止めやがった」
「一歩間違えたら自分も刺されるとこだったのにな」

本当にそれはそうで、いくら警備が仕事とはいえ危なかったことには変わりない。
ましてや岡本さんには婚約者もいるというのに、刺されたりしたら………。
この件で彼に何かあれば、婚約者のかたは2度もパートナーを失うことになるのだ。

「海尋、行くよ?」

ざわついてる中で、京介くんが茫然としていた私の手を取る。
その手の温かさに現実が戻ってきて、でもまだいま起きたことが夢うつつのようで、彼の言葉にコクリと頷くだけだった。
気をつけて帰れよ、という二人に頭を下げて私たちは今度こそ地下駐車場へと向かった。




駐車場にたどり着くといつものように京介くんが助手席のドアを開けてくれ、私は車に乗り込んだ。
お互いに何かを言い出せない雰囲気の中、彼はエンジンをかけ、ゆっくりと車を発進させる。
場内の規制速度を守りながら広い地下駐車場の出口へと向かうときだった。

「…あれ?」

京介くんがハンドルを切りながら首をひねる。

「京介くん?」

それから彼の顔は次第に険しくなっていき―――。

「海尋、しっかり捕まってて! ブレーキが利かないっ」
「えっ!?」

焦りながらも迷いのないハンドル捌きでどこにもぶつけないように、何度も同じ場所を回る。
だけどそのうちに誰かが場内に入ってこないとも限らなくて、このまま延々とガソリンがなくなるまで…なんてのんきなことを言ってる場合ではない。
京介くんは少し長く直線になったところで私に少しずつサイドブレーキを引くように言う。
その結果、車は後部をほんの少しだけ方向を傾かせただけで、大きくスピンもせずに何とかその場に止まった。
すぐにエンジンを切り、京介くんはアチコチに電話をかけ始める。
私はというと、彼の落ち着いた行動に心情的に助けられながらも、これが公道に出た後だったらと思うと今更ながらに震えがきた。

「海尋…、大丈夫だから」

局の施設担当者さんとか今日共演していた隼人さんとかがそこに来るまで、京介くんはずっと私を抱きしめて背中を撫でてくれていた。


~ To be continued ~