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Staticeの花言葉とともに with 中西京介59
~ダーリンは芸能人・妄想2次小説43~
事務所での話し合いの後、私と京介くんはそのまま彼の部屋へと向かうことになった。
その前に一度私の実家へ寄り、当面の間必要な衣類を運び出すことにした。
「お姉ちゃん!」
京介くんを車に待たせて荷造りをしている途中、弟のまーくんがやってきた。
その表情は何故か少し曇っていて…。
「また、京介と一緒に住むの?」
「ごめんね、お母さんが忙しい時はご飯作りに来るから」
「…ご飯のことは気にしないでいいよ、オレだって少しは作れるし。
それよりも、また同棲なの?」
「え?」
「お姉ちゃんが次に家から出るのは結婚する時だね、ってお母さんと話してたんだけど…違うの?」
まーくんに言われた瞬間、事務所で為された会話が思い出され、思わず手が止まった。
京介くんに結婚の意思がないらしい、というwaveチーフ・マネージャーさんの言葉。
彼女の言葉は思いのほか心にさざ波を立てているようだ。
これまで結婚という形を明確に意識したことはなかったけれど、結婚という形に拘るわけではないけれど、やはりいつかは…という思いはある。
恋人というステータスの中ででも一緒に暮らせることは、あの苦しかった日々を思えばとても嬉しいことだ。
たった一枚の紙切れを公式に提出することで夫婦というステータスに変わるだけの話であって、お互いに愛し合っているのならばそれでいいのではとも思う。
だけど、ずっと一緒にいたいとはお互いに口にしてたにもかかわらず、1年半前のあの大事件でそれは確定した未来ではないということを思い知った。
二人の仕事状況を考えると今すぐに結婚するということは出来なくて、だけど、いまの関係のままでは未来が不確定すぎるということに不安が大きくて…。
「京介が事故って記憶喪失になった時にお姉ちゃん帰ってきたでしょ? いまだから言うけど、あの時はもう見てらんなかったし、そのあとも心配で心配で。
それなのに、記憶が戻った途端、また同棲するって…。 ハッキリ言って、オレからみるとお姉ちゃんが都合のいい女扱いされてるようにしか思えない」
一気に話すまーくんの顔を見る。
彼は、一人称が「ボク」から「オレ」に変わり、私を慕う小さな男の子から私を心配する青年へと成長していた。
そのことに気付いたとき、私と京介くんの関係も既に数年が過ぎていることを改めて思い知らされる。
誰よりも近くにいた弟に、そして血の繋がった家族に心配を掛けてまで再びの同棲に踏み切る意義はあるのだろうか…。
「…心配掛けてごめんね。
あのね、結婚は今すぐは無理なんだー。 京介くんもお姉ちゃんも、いまはお仕事頑張んなきゃいけないから。
でも、いつかきっと」
まーくんに心配を掛けないよう、私は出来るだけ明るくそう言い、荷造りのために再び手を動かし始めた。
自分自身が感じている不安を、決して彼に見せてはいけないのだ。
「……お姉ちゃんって、ホント顔に出るよね…」
「え? 何か言った??」
「お姉ちゃんがそれでいいんなら別にいいや。
この荷物、車まで運べばいい?」
既に梱包した荷物の一つを持って、まーくんは部屋を出ていった。
(まーくん…、本当に心配掛けてごめんね…)
軽々と荷物を運んでいく彼に、私は心の中で謝ることしか出来なかった…。
~ to be continued ~