当、創作妄想2次小説(シナリオ)を初めて読まれる方は先にこちらをごらんください。
驟雨-shower rain- Ⅳ −藤崎義人ルート−②
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《ダーリンは芸能人》二次創作小説
ロケ1日目が終了し、反省会の後、バンケットルームで遅めの夕食を済ませて部屋に戻った。
部屋はいわゆるロイヤルスイートで、リビングルームと2つのベッドルーム、それからジャグジー付きの浴室とシャワールームで成り立っている。
バンケットサービスに用意してもらったアルコールと簡単な酒の肴を持って、メンバーだけの飲み会に突入した。
始めは今日のロケについての話をしていたものの。
「さーて、亮太くん? スゥちゃんとの同棲生活を語ってもらおーかなぁ?」
程よくアルコールが回ったのか、京介がいきなりそう切り出した。
少し前になるが、亮太とその彼女は着々と外堀を埋め、それを終えると同時に結婚を前提とした交際をしていることを堂々と公表している。
そのためにメンバーの中で一番早くあの寮を出て、同棲生活を始めているのだ。
「え、ヤダ。 てか、他人のえっちに興味を持つなんて欲求不満なのかなー、京ちゃんは」
「あはは、かもなー」
ケタケタと笑う翔のほうを向いた京介の目が座っていて。
「そう笑ってる翔はどうなんだよ? あの子とのヒミツの恋は進んでんの?ん??」
「うわ、ヤブヘビ…」
京介たち三人がワイワイとやってる横でオレと一磨は静かに飲んでいた。
「悪酔いしてるっぽいな、京介は」
「…」
「−−−お前ら、もうちょっとボリューム落とせって。
それから京介は飲みすぎ」
リーダーとしてメンバーの体調を気遣いながら、たまに声が大きくなる三人に一磨は注意を促す。
そういう一磨にも両片思い中の女性がいて、三人からツッコミが入ったりして顔を赤くしている。
現時点で浮いた話がないのはオレと京介だけだ。
……そういえば、ふと気づいたことがある。
少しでも気に入った女性がいると誘い誘われるままに関係を持っていた京介は、ある頃からそういった行動をしなくなった気がする。
それはいつからだったか?
「…先に休む」
その時期を突き止めるのが恐ろしくて、その理由を想像するのが怖くて、それ以上を考えるのは止めた。
自分が使ったグラスや皿をワゴンに載せ、割り当てられたベッドルームへと足を向けた。
「ああ、おやすみ」
就寝する準備を済ませるとそのままベッドに潜り込む。
道化のように振る舞う京介の声を耳にしながら、その日の疲れからかオレはすぐに寝入ってしまった。
それから3日間にわたって行われた撮影は滞りなく終了した。
午後の便で東京に戻ることになっているのだが、エントランスホールでオレはチーフマネージャーからいきなり休暇を言い渡されてしまった。
「どうして急に」
「急でもないわ。 前々から決めてたのよ。
ちょうど仕事も谷間だし、ここなら静かだからのんびり出来ると思うわ」
彼女はそう言いながら帰り便のチケットを差し出した。
日付を見るとそれは明後日。
延べ3日の丸々2日間の休暇というわけだ。
どうせ休暇になるなら自宅の寮でも良いとは思うのだが、チーフはこうと決めたら余程じゃないと撤回しないので、反論せずにそのチケットを受け取った。
それからオレは再宿泊の手続きをしてルームキーを受け取り、部屋へと向かう。
(仕事してる方がマシなんだけど)
チーフの心遣いはありがたかったが、ハッキリ言ってオレには不要な休暇だ。
海尋と別れてから、ただただ仕事に打ち込んだ。
海尋が居なくなってからは、本を読んでいるときでもふと彼女を思い出してしまうことがあったから、出来るだけ多くの仕事をこなした。
どんなに長い年月が経とうとも、ポッカリと開いてしまった心は埋まることはなかったのだ。
そんなことを思いながら何気なく窓の外を見た。
風があるのか湖面には漣が立ち、光を乱反射させている。
対岸の山の紅葉が鮮やかに色付いていた。
何かに呼ばれたかのように、オレは湖の畔へと向かおうと不意に思ったのだった。
〜 to be continued 〜