注意
当、創作妄想2次小説(シナリオ)を初めて読まれる方は先にこちらをごらんください。
アカン…やっぱりやっぱり頭が冬眠状態Zzz…(*´?`*)。o○
蒼い空、遠いかなた with 中西京介⑧
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《ダーリンは芸能人》妄想2次小説短編vol.40
山田さんは時間通りに迎えに来てくれ、その車にかなたお兄ちゃんと乗り込んだ。
今日の現場であるB局に到着するまでの間、車の中で山田さんは今日の注意事項などをお兄ちゃんにレクチャーしている。
到着後はいつものように入館手続きを行って指定された控え室へ。
その途中でこれまで何度か共演したことのある相馬さんに遭った。
「相馬さん! おはようございます」
「おはよう、海尋ちゃん。 ……新しいマネージャーさん?」
私の後ろにいるかなたお兄ちゃんを見て相馬さんが微笑む。
山田さんがお兄ちゃんを紹介してくれ、他愛のない話をしたあと、再び控え室へと向かう。
その後も、違うスタジオで録りをしている隼人さんや蒼太くん、十真さん、今日の歌番で一緒になるbiRthの徹也くんにも次々と声を掛けられた。
「海尋ちゃん、人気者だねぇ。 みんなから声掛けられてる」
「えー、フツーに挨拶してるだけだよぉ」
そう言って笑いながら話していると、今度は何度もお世話になっているプロデューサーさんも声を掛けてくれた。
「海尋ちゃん、久しぶり~」
「あっ、川内さん、この前はお世話になりました」
「いい企画が来たらまたよろしくねー。
……って、山田くんの隣にいるの、新人くん? それとも新しいマネージャーさん?」
「ええ、見習いさんなんです」
「あらやだ、マネージャーだなんてもったいない。 なんかの企画で使えそう。
……ね、ラビットのマネージャーさんてイケメン率高くない?」
「え、そうですか?」
「そうよォ。
海尋ちゃんの周り、イケメンが多いから麻痺しちゃってんじゃない?
山田さんも黙って立ってるとイケメン俳優と間違えちゃうくらいなのよ?
……仕事になると鬼みたいに恐いけどね」
「ぷっ…」
川内さんの最後の言葉に思わず吹き出してしまった。
彼女は、若い女性なのに仕事に対する周りからの評価が高くて、しかも同性ならではの心遣いに私は何度か助けられていた。
姐御肌な気質でテンポよく話しかけてくれるからこの人との仕事は楽しくて、こうやって廊下ですれ違ってもついおしゃべりがはずんでしまう。
「海尋、もうすぐメイクが来るからそろそろ」
「あっ、引きとめちゃってゴメンねー。 またね!」
「はい、失礼します」
山田さんの言葉に川内さんは身を翻すようにして颯爽と去っていく。
「……なんか、パワフルっていうか、すごい人だね」
「いろんな意味ですごい人なの。 いっつも助けられてる」
「ふぅん」
それから少し行くと自分の名前が書かれた控え室に辿りついた。
お兄ちゃんは入った控え室の中を物珍しそうに眺めている。
「……わぁ、ここが控え室かぁ。 …でもちょっと狭くない?」
「一人だし、まだまだ新人だもん。
それに、ここにいる時間ってけっこう少ないから充分なんだ~」
山田さんが現場確認のために部屋を出ていった後、メイクさんが来るまでの間に自分が出来ることをしながらかなたお兄ちゃんと話しをする。
少しするとノックの音がして、開いたドアから亮太くんがひょっこりと顔を出した。
「海尋ちゃーん、差し入れ食べに………、
って、あれ? 新しいマネージャーさん?」
そう言う亮太くんが驚いた顔をしていて、その後ろにいたのか、京介くんもひょっこりと顔を出した。
「え? かなたさん??」
「あ、中西くんだぁ」
今日、お兄ちゃんが来るコトは言ってなかったので、京介くんも驚いた顔をしている。
見知った顔を見つけたからか、京介くんを見てかなたお兄ちゃんはホッとしたように頬を緩ませた。
「京介、知り合い?」
「あ、こないだ話した、海尋の幼馴染さん」
「あーっ、あの人!?」
どういうふうに説明していたのかはわからないけど、亮太くんがマジマジと私とお兄ちゃん、そして京介くんの顔を見まわしている。
「ふーん…そっかー」
そう言って興味津々といった感じで意味深な笑顔で深く頷いていた。
そんな彼を怪訝な表情で見ながらも、京介くんが尋ねる。
「なんでかなたさんが?」
「昨日ね、お兄ちゃんがいきなり見に来たいって…」
「へー、山田さんがよく許したね」
「あはは…」
そうこうしているうちに今度は一磨さんが京介くんたちを連れ戻しに控え室に来て、そして同時に私を担当してくれるヘアメイクさんもやってきて、それぞれが準備をすることになった。
全ての準備が終わり、スタッフさんに呼ばれてスタジオに入った。
出待ちをしている間、ふと隣にいるかなたお兄ちゃんを見ると、その表情が少し強張っているように見える。
なにか緊張しているのかなと思い、お兄ちゃんの袖を引っ張って小声で聞いてみた。
「お兄ちゃん、どうしたの…?」
「え…っと……、あはは、僕のほうが緊張してるみたい……。
ゴメン、いまおトイレ行っちゃって大丈夫かな…」
「うん、大丈夫だよ。
私、ココ離れられないから付いていけないけど、場所わかる?」
「う、うん、たぶん……。
じゃ、ちょっとゴメンね?」
かなたお兄ちゃんは少し苦笑いしながらスタジオを出ていった。
局内の構造を思い出しながら、たしか一番近いおトイレはあの辺りだったよねと思いながらお兄ちゃんが帰ってくるのを待つ。
だけど、他の方々の出番が滞りなく進んで私の番が近づいてきているのにお兄ちゃんは戻ってこなかった。
もしかして迷ったのかと、少し不安になってきた。
(かなたお兄ちゃん、どうしたんだろ…?)
スタジオの出入口を何度も振り返るけれどその扉が開く気配がない。
私が歌っているところを見たいと言っていたのに…。
私の2つ前の人が呼ばれてスタジオ内の特設ステージに移動する。
(お兄ちゃん…?)
不安がさらに膨れて心配になったとき、隣に静かに京介くんが立った。
そして小声で私に尋ねる。
「海尋、かなたさんは…?」
「それがね…おトイレに行ってくるって言ったきり帰ってこないの…。
迷っちゃったのかなぁ」
「……わかった、探してみるよ。
海尋、もう少ししたら出番でしょ?」
「うん……ごめんね」
京介くんにお願いするのも申し訳なかったけど、彼の出番が終わったということでその申し出に縋ることにした。
「この局、結構入り組んでるからなー。
じゃ、行ってくるよ」
私を安心させるように京介くんは明るく言ってスタジオを出ていく。
いまステージに立ってる人もその出番を終わり、私の番になった。
「海尋さん、お願いしまーす」
「あ、はーい……」
スタッフさんに呼ばれたけれど、かなたお兄ちゃんと京介くんはまだ帰ってきてない。
私は入口を気にしながら立ち位置に着く。
すると、ほどなくして本番の開始と同時にスタジオ入口に二人が入ってくるのが見えた。
(間に合った…)
私がホッとした顔を見せると、お兄ちゃんはニッコリと笑って手を振ってくれる。
心配事が取り払われた私は、いつものように気持ちを込めて歌う。
詞のひと言ひと言に幼い頃の恋心を編み込むようにして―――…。
収録が無事に終わり、私とかなたお兄ちゃん、そして山田さんの3人で控え室への廊下を歩いていた。
「海尋ちゃん、とっても良かったよ。 小さいときから上手だったけど、ホントよかった」
「ふふ、ありがとう」
幼い頃によく歌っていて、それを知っているかなたお兄ちゃんからの褒め言葉に照れてしまう。
その時、前方から京介くんが早足で駆け寄ってきた。
「海尋」
「あ、京介くん。 お疲れさまでした」
「うん、海尋もおつかれさま。
でさ、急な仕事が入ってまた2~3日不在になるから、もう少し実家に行っててくれない?」
「えっ、……いいの?」
「ん。 帰ってきたら迎えに行くから」
「うん、わかった」
計らずも、京介くんの思いがけない提案で叶った実家でのお泊り延長。
多忙な彼の身体に心配しながらも、もう少しだけかなたお兄ちゃんと一緒にいられることに私は嬉しくなったのだった。
~ to be continued ~