「結局は遺伝子で惹かれるのか」
電話の向こうでご主人さまがそう言った。
それ、わたし、何度も言ったよね?って笑った。
出会って間もないころ。
私という本体がご主人さまを好きだと自覚する前。
好きだとも思ってないから、平気で言えたのだ。
「私、あなたの子供が欲しい。なんかわかんないけど(笑)」
遺伝子レベルで惹かれてしまうなら、なんかもうお手上げじゃない。
それって、いわゆる本能。
食べたいとか眠たいとかと同じレベル。
意識しなくてもお腹が空くように、意識しなくても遺伝子がご主人さまを求めるなら、
それって、私には抗いようが無いってこと。
今まで生きてきて、本能が求める人に会ったのは1度きり。
たぶん、人生はもう折り返しにかかっている。
つまり、半分は過ぎている。
半分以上生きて1人なら、残りの半分以下の人生では、きっとそんな人に会うことは無いだろう。
単純な、確率の問題だ。
それなら体の好きにさせてやろう。
私の意思では無く、体の意思だ。
お腹が空けば食べるように。
眠くなったら眠ってしまうように。
私の生きる本能がご主人さまを求めるなら、
体の好きなようにさせてやりたい。
本能を拒むことは、生きることを否定することなんだよ。
ご主人さまに、他の女の人にも話したの?って聞いてみた。
若い女の子に怒られた?って(笑)
怒られたし、まだ怒ってるってお返事。
「その子が言うの?怒ってるとか」
「言うよ(笑)」
「そか…。わたし…」
「ん?」
「わたしいっぱい泣いた」
「ああ」
「わたしいっぱい泣いた」
「泣くんじゃない」
「いっぱい泣いちゃったもん。怒ってないけど(笑)」
「はは」
「泣くんじゃない」って、口調が優しかった。
ご主人さま
いっぱい泣いちゃったって言わせてくれてありがとう。
ヘーキでいるんだ…って思われるのは、つらい。
言葉が不器用で好きだとは言えないから、
いっぱい泣いたと伝えるのが、わたしの精一杯なの。
精一杯、なんです
タダ友タイムになってから、ご主人さまと1時間ちょっとお電話。
ご主人さまの声は耳に優しい。
でもきっとそれは、ご主人さまがステキな声だからじゃなくて、
ご主人さまの声だから好きなんだ。
垂れ目が好きなんじゃなくて、
ご主人さまが垂れ目だから垂れ目が好き。
白髪混じりの髪が好きなんじゃなくて、
ご主人さまが白髪混じりだから白髪混じりの髪が好き。
そういうこと
そういうことよ