タワーは上のほうが膨らんだデザインになってて、
下から見上げるとこっちに倒れてきそうに見える。
「倒れてきそうだろ」
「うん」
ちょうど今、そう思ったとこよ(笑)
「上に昇るの?」
「これの上に昇るのは素人(笑)」
「そうなの?」
すたすた歩きだしたご主人さまの手を握って、
ねえねえ、プロはどこに昇るの?って聞いた。
ご主人さまは教えてくれない。
ん~?とか言ってとぼけてる感じ。
高いビルとかホテルみたいな建物の傍を通るたびに
(こーゆーとこの最上階とかかな)って思ったけど、
ご主人さまはどんどんすたすた歩いてゆく。
…あれ?
車のとこに戻って来ちゃった。
ご主人さまが乗り込んだから、わんわんも助手席に乗り込む。
頭の中はハテナマーク。
(ああ、単にタワーに昇っても面白くないってことだったのか…)
プロならここに昇るんだ、って意味じゃ無かったんだなー、って思った。
「けっこう遊んだな」
「うん、遊んだ」
「満足した?」
「した~!通天閣?あ、新世界!道頓堀のとこも中華街もごちゃごちゃで楽しかった。ポートタワー綺麗だったね」
「そりゃ良かった(笑)」
わんわん、大阪とか初めてだったから、
ご主人さまがあちこち連れてってくれて楽しかった。
道頓堀が思ってたより綺麗だった~、とか、
バナナの串揚げは1回でいいや、とか(笑)
いろいろ話しながら、気付いたら車は何だか山道っぽいとこを走ってた。
混んでるとこを避けて、抜け道を通ってるのかなー、って思った。
お腹いっぱい
遊び疲れた
で、ちょい寝不足
駄犬は、またウトウトしてしまいまちたよ(笑)
カクンってして(やだまた!)って思って目を擦った。
ずいぶん霧が出てる。
車は駐車場みたいなとこに入ってった。
「降りるよ」
「うん」
お返事したものの、頭の中は(へ?ここどこ?降りるの?)でイッパイ。
「駄目か。何も見えないなあ」
「?何か見えるの?」
「夜景がね(笑)」
!!!
プロはここに昇るんだったのかっ!
今ごろ気付く駄犬。
「何も見えないね」
「霧が出てるなんて初めてだよ」
「そうなの?いつもは夜景が見えるの?」
「見えるよ。今日は珍しい」
「そおかあ…」
「ま、残念でした」
「うん」
六甲山の上から神戸の夜景は見えなくて、
車はそのまま来た道を戻り始めた。
ある程度下ったら霧が晴れて、隙間隙間から夜景が見えた。
「見えた~!きれいー」
「一瞬だね(笑)」
「でも見えたよ。きれいだった」
「ま、俺は見たことあるからいいけどね」
俺は見たことあるからいい
…お前は見たこと無いから、見せてやりたかった…って聞こえちゃったよ。
ポジティブに解釈しすぎかな。
「わんわんもいま見えた(笑)」
見せてやりたいって思ってくれてありがとう、って思った。
山からの下り道の途中途中で、チラチラ見える夜景がきれいだった。
すごくきれいだった