ご主人さまに会いたい。
会いたくない。
…会いたくないんじゃなくて、どんな顔して会えばいいのか判らない。
うーん、うーん、って悩みながらご主人さまとの待ち合わせ場所に向かった。
途中でモーニングコールする約束をしてた。
「おはよ~」
「…どちらさま?」
もう。
携帯に『わんわん』とか表示されたくせに。
「わんわんさんです!」
「あー…わんわんさんですか」
「あのね、9時に着くよ」
「判った(笑)」
電話でのご主人さまは普通だった。
いつも通りのご主人さま。
待ち合わせ場所に来たご主人さまも、まったくもっていつも通り。
うん。
うん、きっとそうかな…って思ってたし、
ゆうべのことはこころの奥にブクブクって沈めてしまおう。
わんわんはエ/ッチしたがり。
ご主人さまに『何したい?』とか『どこ行きたい?』って聞かれると、
たいていいつも『エ/ッチする』ってお返事してる。
で、笑われる。
この日も同じように聞いてくれたけど、
なんだかすごく普通のデートがしたくなった。
たぶんだけど
…なんとなく、穏やかな時間を共有したいなあ…なんて思ったの、かな。
見たい映画は時間が合わなかったから
(ご主人さまは夕方には帰る予定だったから)
ボーリングでもしよっか、って話しになった。
わんわんがトイレに行ってる間に、
ご主人さまがボーリングの受け付けを済ませておいてくれた。
指定されたレーンに行くと、モニターのスコア表に名前が表示されてた。
ご主人さまはフルネームで。
わんわんは下の名前だけ。
(…なんかさあ…)
なんか、夫婦っぽい表示だなあ。
ちらちらと他のレーンを見ると、
たいてい下の名前だけか愛称みたいな表示。
『タケシ』
『リカ』
とか
『よっち』
『みーぽん』
とか。
『タナカ タロウ』
『 ハナコ』
↑こんな表示は見当たらない。
しかも、ちゃんと本名だった。
ご主人さま…割とわんわんのことは偽名で書くことが多い。
理由は、よーく、よーく判ってる。
ご主人さまは独身だから本名でも問題ないけど、
わんわんはそうじゃないから。
いつも気を使って貰ってるの、よーく判ってるのに、
ちょびっと寂しい気持ちになってたのも事実。
だからねだから。
本名並べて書いてくれてたことが、ただただ嬉しかった。
馬鹿みたいに小さいことだと思うけど、
私にはすごく嬉しいことだったんだもん。