(人が来るんじゃないかな)
頭のスミッコのほうでそんな事を考えている自分もいるのに、
金網にしがみついたままお/尻を突き出して、
時々、あっ、なんて声を漏らしてしまう。
後ろから私の腰を支えていたご主人さまの手が、
ふいに私の口元を覆った。
それから、もう片方の手を胸の辺りに回し、
グイ、と引くように上体を起こされた。
口元を覆われたまま目を見開いていると、
犬を連れた人がそう遠くないところを歩いている姿。
それが街灯に照らされて、ぼんやりと私の視界に映り込んだ。
背中側からご主人さまに支えられて立っているのがやっと。
ヒザなんてカクカク、太ももはぶるぶる震えてる。
「…見られてんじゃない?」
耳たぶを噛まれるんじゃないかと思った。
ご主人さまの言葉で、また身体が強張って、
繋がったままの場所はキュウと収縮した気がする。
私がジッと立っていれば、たぶん後ろから抱きすくめられているようにしか見えないはず。
ああ、でもダメ。
ヒザがカクンと折れてしまいそう。
ご主人さまに支えられていないと、腰からガクンと前に倒れてしまいそう。
「…行ったね」
「…あ……んっん」
口元に張り付いていたご主人さまの手の平が離れると、
私は不足していた酸素を貪るようにぱくぱくと口を動かした。
「声出すとまた犬に吠えられるよ」
背中側だから見えないけど、きっとご主人さまは笑ってる。
私が金網にしがみついてしまうと音がうるさいと思ったのか、
後ろから抱き抱えるような格好のまま、身体の向きを変えられた。
目の前には金網じゃなくてご主人さまの車。
そこで支えてくれていた腕を放されて、私はボンネットの上に崩れるように両手をついた。