「どこか車を停められる場所ある?」
それだけでピンと来た。
カー/セ/ッ/ク/ス出来る場所って意味で聞かれているんだ。
「…知らない」
「駄目だなあ。下調べは大事だぞ」
普段、カー/セ/ッ/ク/ス出来そうな場所…なんて視点で景色を見ていないもの。
急に聞かれたって、自信を持って「あそこなら」なんて言えるはず、無いじゃない。
ここはご主人さまの地元じゃないし、どちらかと言えば私の生活圏だし…
そう考えても、カー/セ/ッ/ク/ス出来そうな場所なんて、ちっとも頭に浮かんで来ない。
私、駄目だなあ…
毎日ぼんやり生きてるんだなあ…
なんて、思考が明後日の方向に動き出す。
冷静に考えれば、そんな場所知らなくたって、なんの問題もないのにね(笑)
でも、それは『普通に生きているなら』だ。
普通の主婦ならそれでいいの。
私は犬であることを望んでいるのだし。
ご主人さまの『いつでもどこでも』のお言い付けもあるのだし。
「じゃあ帰るか」
「えっ?」
「しょーがないじゃん」
半分本気みたいな、半分面白がっているようなご主人さまの声色。
…ちがうな。
半分じゃない。
完全に本気で完全に面白がってる。
私が困ったような表情をすると、ご主人さまはいつもニヤニヤ笑いを浮かべるもの。
「…いや」
小さな抗議の声。
「なら、ちゃんと探しなさいよ」
わかってる、ちゃんとわかってるの。
気持ちが焦ってしまって、早く思い出さなきゃ、なんて考えてしまって、結果はただ思考がグルグル。
通りすぎる景色。
どこを見ても(ここなら)(でも人が通るかも)の繰り返し。
いやだもう、泣きたくなってくる。
頼りない脳みそのバカバカ。
だんだん無口になる私。
どうしよう…ご主人さまは苛々してるだろうか。
少し俯いていると、ふいに車が停まった。
慌てて顔を上げると、住宅地の中にあるレストランか何かの駐車場だった。
真っ暗じゃなくて、普通に街灯が夜道を照らしたりしてる。
(ここ?)
そう思うのと同時に
「まあ大丈夫だろ」
そう、ご主人さまが口を開いた。
ちょっと明るいし…今は誰もいないけど、全く人通りが無い…って感じじゃない。
でも大丈夫かな。
車の中なんだし…覗き込まれたりしなければ…
「降りて」
「え?」
「ん?降りて」
……は?
カー/セ/ッ/ク/スする場所を探してると、私が勘違いしてた…のかな?