わんわんは急にご主人さまのお部屋に遊びに行った。
『これから行くよ』
『マジか』
『もう着くよ(笑)』
『なんだ(笑)こっちももう終わるよ』
『ナイスタイミング(笑)』
もう終わると返事を貰ったので、まっすぐにご主人さまのお部屋を目指した。
ピンポンを鳴らすとご主人さまがお部屋のドアを開けてくれる。
「ホントに来た」
「うん」
「嬉しそうな顔するんじゃない」
「えへへ」
わんわんを叱り付けながらお部屋に入れてくれるご主人さま。
グッと肘あたりまで腕まくりをしている。
とことこお部屋に入ると、キッチンでお鍋がカタカタ音を立てていた。
「メシは?」
「まあだ」
「スパゲティ食べる?」
「!!食べる!」
待ってな、と言ってからご主人さまはキッチンに立ち、わんわんに背中を向けた。
わんわんはベッドの隅っこに、両膝をくっつけてお行儀良く腰をおろした。
「テレビでも見てなさい」
「うん」
点きっぱなしのテレビ。
生返事のわんわん。
ご主人さまの背中から目が離せない。
ご主人さまの動きに合わせて、トントントンとか、ジャーとか、そんな音が聞こえてくる。
右や左に小さく揺れる背中。
手元を見ているのだろう。少し俯いた頭。
時々チラとわんわんを振り返る。
「…テレビ見てなさいって」
「うん」
また少ししてからご主人さまが振り向く。
「こっち見てなくていいから」
「うん」
「見てるじゃん」
「面白いんだもん」
くすくす笑うわんわん。
バツの悪そうなご主人さま。
いい匂いがして来た。
「おまたせ」
「わー!」
わんわんの大好きな明太子スパゲティ。
ご主人さまは冷蔵庫からコーラを持ってきてくれた。
わんわん、飲み物でコーラが1番好きなのを、ご主人さまは知っている。
(わんわんが『行くよ』って言ったから、仕事帰りにスーパーでスパゲティの材料とかコーラとかお買い物してきてくれたんだ…)
心の奥のほうが、じわん…とした。
幸せすぎて泣きたくて、『エグッ』ってえずきそうだった。
美味しいのに美味しいと感じる余裕もなくて、
スパゲティをぎゅうぎゅう口の中に押し込めるように食べた。
「腹減ってたの?」
「うん」
「旨い?」
「おいひい!」
ご主人さまのお部屋にはソファが無かったから、
二人でお行儀悪くベッドに座って食べた。
ご主人さまがわんわんにお料理してくれた。
さっきまで見てた背中が夢の中みたいに思えた。
おっきい背中が小さく左右に動いて、スパゲティが出来て、
わんわんが食べてる(笑)
今は食べられない。
ご主人さまのおうちは遠いから。
…ご主人さま
またわんわんちの近くに戻ってきてくれないかなあ…