俺には2つ上の姉がいる。

昔から俺たち二人はとても仲がいい。なぜかといったらこれには大きい理由があって、なんといっても

姉は性格が良くとても優しい

俺は子供の頃からわがままを言っても怒られたことはないし、嫌なことがあってたまに相談をしても優しく聞いてくれる。

はそんな姉が大好きだ。

 

その姉もまた毒親の被害者である。

今は結婚して実家を出ており、親との距離感をうまく?コントロールしているのだが、実家にいる学生時代は俺よりも被害にあっていたのは間違いない。俺はそれで崩れていく姉を間近でずっと見ていた。

崩れていくという表現はなにも誇張したものではなく、本当に崩れていったのだ。

あんなに優しくて誰にでも寄り添って人思いな姉が。

 

エピソードを話せばキリが無いので一つ大きな事件を紹介する。

その事件のせいで姉は今でも悩み続ける大きなトラウマを抱えることになる。

 

あれは姉が高校生で俺が中学生の時だった。

姉はここら辺では有名な進学校に通っており、毎朝5時に起きて始発電車に乗り徒歩と合わせて1時間かけて登校し、

部活が終わってから終電に乗って家につくのは夜の9時頃。

そこからご飯、風呂などを終えて進学校ならではの大量の課題をこなし、寝るのは早くても深夜2時頃。

起きるのはその3時間後である。

テスト前には勉強のため朝まで起きることなんてざらにあり、精神的にも肉体的にも限界が来ていた。

もちろん自分の時間が無いので部屋の片づけはできずに部屋は勉強のテキストや脱いだ服などでとっ散らかっており悲惨な状況だった。

その時期は両親ともに「あいつはだらしない奴だ。」「お嫁になんて恥ずかしくて出せない」などと頻繁に言っていた。

 

母は毎朝俺と姉を起こしに来るのだが、その部屋を見た母はいつも姉をこっぴどく叱っていた。

その声で俺は毎朝起きるのだ。正直空気も悪く最悪だった。

姉は最初は何も言わなかったのだが、いつからか姉は私生活においても俺やおばあちゃんに対してもあたりが強くなっていったり機嫌損ねることが増えていき、少しやさぐれていった。今思うと当たり前である。

次第に毎朝の母の怒号に加え姉の反抗の声も混ざるようになっていき、それが数週間続いたある日についに事件が起こった。

 

いつものように二人の大喧嘩で目が覚めると、なにやらいつもより騒がしい。

物が壁にぶつかり振動も伝わる。何か投げつけたのか。

その時母は姉に向かって言った。

死ね

あの瞬間は忘れない。隣の部屋で聞いていた俺も思わず言葉を失った。

中学生ながらにとても強い恐怖も覚えた。

姉はぐしゃぐしゃ泣き出し、言葉にもならない言葉をなにやら大声で発してその場を離れた。

 

そのあとはしばらく母と姉は会話する事がなくなったのだが、時間が解決して会話は普通にするようになりやがて姉は大人になって自立し、実家を出ることになる。

 

それから長期連休では少し実家に帰ってくるのだが姉はその時のことを思い出し、今でも一人でどこかに消えて探すと誰もいない部屋でしくしく泣いている。

あの出来事からもう10年以上経っているというのに。

しかし、子供からするとそんなの関係ないのだ。全く関係ないのだ。トラウマとはそういうものである。

 

 

【追記】

ついこの前の話だ。姉は胸のあたりに大きな痛みを感じて病院にいったところ、胸腺が肥大していることがわかった。

他にも検査を受けた結果、バセドウ病であることも判明した。

幼いころから体が弱く、入院も頻繁にしていたり体調もすぐに壊す。

おまけに精神的にも弱くすぐに鬱っぽくなるくせに、人一倍責任感が強くなんでも受け入れなんでも完ぺきにこなしたがる。

 

今は治療に専念しているおかげでだいぶ良くなったそうなのだが、姉としては大きな変化があったらしい。

それはなぜか分からないが勝手に部屋を片付けたり、人に対しても気を使いすぎることもなく精神的に楽になっているらしい。バセドウ病に限らず、甲状腺系の病気というのは人のホルモン分泌を悪く左右する大変深刻な病気であり、それに気づくことでこうした人生の好転にもつながるのだ。

 

話を戻すが、俺は一つ引っかかるところがある。

この甲状腺の病の影響もあって姉は今までとても苦労し、ただひたすらに「だらしない」という洗脳を受けて育ってきたのだ。そしてあの事件の時だって少なからずこの病気が影響していたことは間違いない。

親はどちらもとても綺麗好きなので暇があれば掃除をする。掃除ではなく年末の大掃除レベルだ。

それに加え、自分の考えは押し付けるのでお前らもここまできれいにしろと言わんばかりの物言いでくる。

 

しかしだ、俺はこの姉の病気をあの事件から10年以上経って発覚した今だからこそ母、いや両親から

あの時は分かってあげられなくてごめん。

その一言があってもいいのではないかと思う。

 

俺は優しくて人思いでそれでも弱い姉が本当にすべてのトラウマや悩みを捨てて、幸せになってほしい。