うちの子は前のミルクから3時間ピッタリでお腹が空く、腹時計が正確な子です。
今日も22時に眠りについたので、同じタイミングで我々夫婦も寝かせていただいたのですが、夜中の1時にいつもの鳴き声がアラームのように響き渡りました。
間髪を入れずに妻はおっぱいを吸わせ、自分が一階にミルクを作りに行くという、無言の連携プレーが今日も行われ、つつがなくミルクを飲ませ切りましたが、なんだか眠れない。
連日続いた雨で夜中まで蒸し暑いことと、前日読んだ論文が頭から離れなくなってしまったようです。
そこでこれを書くことにしました。
・カワムツとヌマムツの生態や違いを論文からまとめた
「特定の魚について書いた論文って、ネットにどの程度あるんだろうか?」
と思って検索すると、出るわ出るわ。
論文のデータにどの程度の信ぴょう性があるのかはわかりませんが、
一見すると人間が生きて行くのに不必要だと思えることに労力を費やした結果のことなので、
まぁ誰かを騙す類のことは絶対に書いてないんだろうな、と思って信じることにしました(なんか自分嫌な奴だなぁ
そこには自分が日ごろから気になっていたことが、たくさん書かれていて、なんだか興奮してきてしまいました。
自分が読んだ論文は、大阪公立大学の
「カワムツ属2種の遺伝構造と生活史特性に関する保全 生物学的研究」
というものです。
・カワムツとヌマムツの生息域と特性
カワムツは東アジアに広く分布し、ヌマムツは日本の固有種らしいです。(ほぉーそうなんだ
カワムツは標高450mから低地まで広く分布しますが、ヌマムツは標高100m以下の、比較的標高の低い場所に生息していることが多いようです。
つまりヌマムツは山地の渓流域まではあまり上っては行かないみたいですね。
また、ヌマムツは川のそばに植生帯(草があるところ)で多く見られ、カワムツは礫(小石)があるところで多く見られるようです。
多数の個体に標識を打って生活中の移動の程度を確認したようですが、カワムツ・ヌマムツ共に、下流域への移動しか見られなかったとのことです。
このことから、カワムツ・ヌマムツに関しては、基本的には堰堤を遡上することはない、と考えられます。
また詳しい実験の内容自体は割愛しますが、
ヌマムツはどうやら1~2年で成熟して、繁殖後に死亡するらしいです。
対してカワムツですが、成熟するまでに3~4年ほどかかり、寿命はヌマムツよりも長いのではないかと考察されています。
また、そのような短い寿命を持つヌマムツなので、
「環境変化によって繁殖が1年でも妨げられた場合、個体数を減少させる可能性が高い」
「支流集団間における遺伝的分化の程度は,カワムツよりも高いことが明らかになり,このことは,集団間の交流頻度が低いことを示している」
「環境変化によって個体数が減少した場合,集団間の交流が低頻度で移入個体がなければ,個体数の回復は再生産のみに依存することになる.これらのことから,ヌマムツはカワムツと比較して,環境変化に対して脆弱であり,さらに比較的狭い範囲で生活史を完結させているため,個体群の分断化と小集団化が起こりやすいと考えられる」
と書かれています。
つまりヌマムツは、他の群れと合流することがほとんど無く、ずっと身内だけの集落で暮らし続けている。
よって、その集落で子供が生めなくなると、そこの集落自体が消滅するといった感覚でしょうね。
カワムツのようにアグレッシブに移動して子孫を残すことがないので、ヌマムツは環境破壊によって個体群を減らしてきた。
ヌマムツだけがレッドデータブックに載っている(絶滅危惧種である)のは、そういうことだったんですね。
見た目が似ている両種ですが、こんなにも違いがあったんですね。こうして比較されると別物だなと思わされます。
・見た目がほぼ一緒の魚を、どうして別種として判断したのか
側線の鱗の数や、ヒレの棘条や軟条の数(ヒレのトゲトゲの数)で別種と判断するのは、魚類にはよくあることですが、
アカエソとミナミアカエソ、ナミマツカサとアカマツカサみたいに、見た目にほとんど変化がなくて、何なら棘条や軟条の数まで被ることがある種類だと、もう見た目での判別は無理に等しいです。
そういった魚をどうして別種として判断してきたのか、今まで凄く疑問に思っていました。
もしかして遺伝子検査でもしたのか?と考えていたら、実はそうでした。
論文には、
「ミトコンドリア DNA に基づく分子系統解析において,独立したクラスターに分かれること,
また,マイクロサテライト DNA に基づく類似度解析において,明瞭に異なる2つのグループに分かれることが明らかになり,種間交雑個体は確認されなかった」
と書かれていました。
つまり、生物を構成するDNAの塩基配列ってやつがあるんですけど、それを調べてみたら全然違ったので別種だったってことでした。
魚の世界では、イシダイとイシガキダイが自然の中で交雑してイシガキイシダイが出来たり、ニッコウイワナとの交雑が進んで純粋なヤマトイワナがいなくなってる、なんて話を聞きます。
しかし、種間交雑個体が確認されなかったということは、カワムツとヌマムツは形質的な特徴だけで種を特定して良い、という種の同定マニアにとっては、実に優しい魚種であることが明らかになりました。
自分が気になったことを科学的にとことん追求する人がいて、それが我々の生活の裏で行われていると考えると、どこまでも探求心がある人がいて頭が下がります。
さて、興奮が冷めやらぬうちに近所の小川にカワムツを釣りに行こうかな。
もしかしてそれが珍しいヌマムツだったりして?と考えると、余計にワクワクしてきます。