私の人生そのものが逃亡生活だ。
といっても、刑法犯罪を犯したわけではない。
私自身が私の人生から逃げようと必死になっている。
私の運命から逃げようと必死でもがいている。
それが私の逃亡人生だ。
高校時代のトップ争いから逃げ、受験勉強から逃げ、大学入試の失敗から逃げ、大学の講義から逃げ、単位取得試験から逃げ、就職活動の失敗から逃げ、とにかく逃げ続けた。
ひとりぐらしを始めてからは、食べることや眠り続けることで現実から逃げようとした。
酒もあおった。ワインをボトルからラッパ飲みした。ケーキを1ホールまるごと食べた。炊飯器からしゃもじでごはんを食べた。大鍋に作った料理を食べ続けた。菓子パンを7個食べたり、食パンを一斤食べたり、唐揚げを1キロ食べたり、チョコレートを500グラム食べたり。
それでも、アルコール中毒にも、過食症にも拒食症にもなれなかった。
自分の身を危険にさらしたくて、夜散歩した。
大きな墓地に歩いて行ったり、近くのお寺にたたずんだり、人気のない山の中に歩いて行ったりしたが、何も起こらなかった。
お酒を飲んですぐお風呂に入り、息を止めて湯船に沈んでみたり、体が冷えるまでずっとそのままにしていたりしたけれど、何度やっても息が苦しくて無理だった。
病院に通い、眠剤をもらうようになってからは、アルコールと眠剤を大量に飲めるだけ飲んだこともあったが、まる1日眠り続けて目が覚めてしまった。
押し入れにこもり、電話線を抜き、トイレと押し入れの往復しかしなくなった。
水しか飲まなくてもなんてことはなかった。
食べすぎて太った後に気付いたら10キロ痩せていた。
着る服はなかった。
スカートは腰にさえひっかからなかった。
どんなことをしても人間は生きていられる。
そう簡単には死ねないのだということを悟った。
そして今でも必死に現実から逃げようとしている。
今生きているのは私じゃない、と。
