■5円玉の原価が5円以上になりそう   5円玉1枚あたりの原価は4.71円で、額面の94%―― そんなニュースが、5月16日の日本経済新聞で報じられた。

5円玉は銅や亜鉛を原材料としているが、非鉄相場の値上がりと円安によって、貨幣の製造コストが上がっているのだという。1円玉の製造には3円程度かかると言われていたが、この調子だと5円玉も5円を上回りそうだ。 

 

   ところで、財布の中に入っているコインの年号をチェックしてみてほしい。

“令和”の年号が刻まれた1円玉、5円玉は見つかるだろうか。『2024年版 日本貨幣カタログ』(日本貨幣商協同組合/編集・発行)を開いてみると、令和に入ってから、1円玉と5円玉の製造量が激減していることがわかる。

消費税が10%になったことで1円玉のニーズが減ったこと、さらにはキャッシュレス決済の普及などの影響もある。   

 

令和になってから、市場流通用の1円玉は製造されていない。

貨幣愛好家向けに造幣局が販売している「貨幣セット」用に作られているだけだ。1円玉のみならず、5円玉も貨幣セット用のコインになりつつある。

そのため、5円玉の製造原価の高騰は、それほど深刻な影響がないと思われる。

 

 ■10万円金貨は原価が安すぎると批判  貨幣の原材料費が話題になった事例といえば、昭和61年と昭和62年に発行された、天皇御在位60年記念の10万円金貨が有名だ。

戦後初の記念金貨、初の額面が10万円の金貨として大きな話題になり、貨幣ブームが起きた。

額面は10万円で20gの重さであったが、金の地金価格は当時で1グラム約1900円程度、単純計算だと原材料費は3万8000円程度でしかなかったといわれる。   

これには、世間からもボッタクリだと批判が巻き起こった。

昭和61年の10万円金貨は1000万枚、昭和62年のものは100万枚も発行したため、国は金貨を使ってめちゃくちゃ儲けたなどと言われたのである。

このように、あまりに地金の価値と額面が釣り合わなかったため、1990年、大規模な偽造事件が発覚してしまった。  

さて、ボッタクリだと批判された10万円金貨、現在はどうなっているだろう。

古銭などの買い取りを行っている「おたからや」のホームページを見てみると、25万2700 円になっている。

ご存じのように、金が歴史的な高騰を見せており、地金の価値が額面を上回ってしまったのだ。  

記事を読んでいる人の中にも、10万円金貨を引き出しにしまい込んでいる人がいるかもしれない。

ほんの少し前までは、10万円金貨をコイン商に持って行っても「買い取り不可」といわれたものだった。プレミアはまったくつかず、「銀行で両替してください」と言われたのである。それがいつの間にか、額面以上の価値がついてしまった。

10万円でゲットして、長期保有していた人は大儲けだ。ラッキーと言うほかない。

5円玉の製造コストが高騰中。