今年に入り、麻疹(はしか)のワクチンが不足しているという声が医師や薬剤師から上がっています。こうした中、国内では2月以降、はしかの感染者が相次ぎ確認されるようになりました。今後、感染が拡大した場合、ワクチンの供給状況が悪化する懸念があり、医療現場では対応に苦慮しています。 

2月以降、供給滞る

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 東京都文京区の細部小児科クリニックでは2月以降、はしかのワクチンを注文しても希望した半分程度しか納入されなかったり、届くのが1週間ほど遅れたりするようになったといいます。院長の細部千晴さんは「(定期予防接種の対象となる)1歳児、妊活中の女性、はしかに感染した可能性のある0歳児の緊急接種を優先するようにしています」と話します。  はしかの感染者が相次いでいる状況を受け、クリニックには「春休みに帰省したり海外旅行にでかけたりするので接種してほしい」という人が訪れるようになったといいます。しかし、ワクチンが足りないこともあり、「今は出かけるのを控えてはどうか」と提案するなどして、対応しています。

ワクチン自主回収

 ワクチンには、はしか単独のものと、風疹とはしかを防ぐMRワクチンがあります。国内では、武田薬品工業、第一三共、阪大微生物病研究会が製造しています。  このうち武田薬品は1月、安全性に問題はないものの予防効果が十分ではないワクチンを製造したとして、単独、MRとも自主回収に踏み切りました。これがワクチン不足の要因と考えられています。こうした中、はしかの感染者が相次ぎ確認されるようになり、関心が高まりました。武田薬品のワクチンは4月から出荷が再開される見込みですが、すぐに供給が安定するかどうかは不透明です。

免疫は一生

読売新聞社

 はしかは、空気感染、飛沫(ひまつ)感染、接触感染により、人に広がります。感染力が非常に強く、1人の患者から12~18人程度にうつす力があるとされています。  感染して10日ほどたつと発熱やせき、鼻水といった症状が表れます。症状が2~3日続くと、39度以上の高熱と発疹が出ます。感染者1000人に1人程度の割合で、脳炎を発症することもあります。  免疫がない人が感染すれば、ほぼ100%発症します。しかし、ワクチンを接種したり、かかったりすれば、免疫は一生続くと考えられています。