本件についての所感まとめ
浦和の意見自体には正当性が一定程度認められると思うが、委員会において議論を尽くしたうえで合意がなされた事柄に対し、更に反対の意を表明し自らに賛同しなかったクラブを非難するのは非常に残念なことである。
浦和の提出した意見の自体の正当性はある程度認められるものである。例として設置が許可された「段ボールサポーター」を挙げると、これはクラブ独自で作れるような代物ではないので、おそらく業者に発注することになるのだろう。製造した業者から運送業者を介して製品がクラブに届きそれをスタジアムに搬入する過程で感染が生じるリスクがないと言い切れない。であるから横断幕をサポーターからクラブに手渡すことより低リスクと証明することはできない。ならば横断幕だけ禁じられるのは納得がいかないというのも意見としては誤りではないだろう。
ただ、多くのクラブが懸念しているであろう、クラブ管轄外から持ち込まれた物品からの感染が生じた場合の責任の所在や感染経路の追跡の難しさというものもまた存在するのは確かであるから今回の実行委員会の決定は支持できるものと言えよう。
問題は、各クラブが意見を出し、議論を尽くし一定のコンセンサスを得た事柄に対して更に反対の意を公然と示すという行為そのものである。
もし今回の決定がリーグの独断で決定されたことであるならば、それに対して反対意見を呈するのは許されることであり、正当な手段である。
しかし今回は各クラブの代表が集まる実行委員会において自らの意見を述べる機会が充分にあり(浦和自身も実行委員会で多くの時間を割き主張したと述べている)、議論したうえで決定された事柄である。それに公然と意を唱えるというのは、明らかなルール違反と言わざるを得ない。更に、「多くのJクラブがサポーター横断幕の掲出を嫌がっている」と批判する文章を加えているのも、自らを正当化しつつ、自分の意見に同調しなかった他クラブの印象を悪化させようとする非常にリスペクトに欠けた振る舞いである。
会社で例えるならば、会議において自分がプレゼンした案がボツになり、他の案が採用されたにも関わらず、他の社員に自分のプレゼン案の正当性と採用された案に賛成した社員を非難する文言を書いた書類を送り付けるようなものである。こんな社員と同じ会社で働きたいと思うだろうか?
今回もしどうしても意見を表明するのであれば、自クラブのサポーターに向けてのお知らせに留めるべきであったと思う。内容も実行委員会で意見を表明したがそれが認められなかったことを報告するとともに、今回の決定事項を尊重・遵守するようお願いする文章としておけば、クラブの立場を表明しつつリーグや他クラブへのリスペクトを示すことができたのだが。
資金力もありサポーターの数も多く影響力の大きいクラブの振る舞いとしては非常に落胆させられるものであり、以前の人種差別的横断幕掲出やクラブバスへの爆竹投げつけ事件の頃とこのクラブの自分本位な思考パターンが何も変わらず進歩が見られていないことが今回の一件で明らかになってしまったのは残念である。