明順応曲線

私たちの眼は暗い環境から、明るい環境へ移行すると瞬時にそれに適応する。

α順応 
0.05秒という 極めて早い時間に完了する。神経系の反応。

β順応
約1秒という 比較的ゆっくりとした時間をかけて完了する。化学的な反応。

この明順応曲線は天文関係の書籍にはほとんど紹介されることはない。

この反応に 私たちは気がつくこともなく過ごしているかもしれない。





私たちの眼は暗い環境下では
暗順応して、視覚の感度上昇が起こる。

逆に明るい環境下では
急激に明順応し、一瞬のうちに視覚が劇的に変化する。

このために ほとんどの人は
暗い環境下でも 自分の視覚が変化していることに気がついていないのだ。


暗順応曲線

第一次暗順応 
暗い環境下では5分から9分程度で、色を感じる錐体視細胞による暗順応が完了する。
この時は色を認識しながら、視覚の感度が上昇する。
この時の感度のピークは555nm付近である。
眼視等級と近いとされる、V等級の感度ピークはこれを指している。

第二次暗順応
暗い環境下になってから、10分程度を経過すると さらに視覚の感度上昇は続く。
この時は 稈体視細胞画像主体となる暗順応で 色は認識出来ない。
この時の感度ピークは505nmである。

彗星の眼視観測者の多くは 505nm付近の感度ピークで彗星の明るさを見積りながら、V等級の比較星を使っている。

変光星の眼視観測者の多くは
おそらく第一次暗順応レベルに留まっている可能性が高い。

ところが彗星の明るさを 眼視で測る場合、眼視者の多くは第二次暗順応レベルで観測されているはずではないだろうか?

そうなると、変光星の眼視観測のように、V等級を鵜呑みにして観測するわけにはいかないはずである。

この点を ほとんどの彗星眼視観測者の方々は ご存知ないか
見て見ぬふりをしている。

稈体の感度ピーク域のV等級がまとめられていない以上、私たちは変光星に使われている眼視等級を騙し騙し使うしかないのはやむを得ない。

しかし、そのことを認識する必要はあるのではないだろうか?


私たちの眼は日々、暗順応と明順応を 瞬時に繰り返している。

しかしながら、天体観測に長年親しんで経験を積んでいるはずの観測者の方々のほとんどは
その点についての勉強を怠ってきたと思う。