昔の天文雑誌には

「小さな口径の望遠鏡はアクロマートで十分」

という記述がよく見られた。

それは「小さな口径の望遠鏡では、拡大率が小さいので、色収差が目立ちにくい」

・・・という意味でだいだいたい正しいと思う。

多くの眼視用のアクロマート望遠鏡は C線F線で軸上色消しにして、d線付近で球面収差とコマ収差を最小になるように設計されているという。

これに対して、吉田正太郎先生は
天体望遠鏡では暗い星を見ることも多いので、e線に対して球面収差とコマ収差を補正する方が合理的である・・・と、ご提案されている。

F線からe線にかけては彗星の輝線スペクトルが多数見られるところだ。

暗順応した人間の眼はまさに彗星を見るのに適していると思う。

1983年の 星の広場の『星を見よう会』
1984年の 『胎内星空まつり』では フジノンの15センチ双眼鏡で じっくりと彗星を見る機会に恵まれた。

同じメーカーの大型双眼鏡では
アクロマートとEDアポクロマートに 明らかな見え味の差があったと記憶している。

アポクロマートの方が明らかに彗星はよく見えた。

吉田先生のご提案のように、あんまり順応に対応したアクロマート望遠鏡が実際にはあったら、さぞや痛快なことだろう。

昼間の景色や月を見ても、普通のアクロマート望遠鏡よりもイマイチなのに、彗星になると滅法よく見える!

・・・なーんてことになるのかなぁ。

もちろん、彗星用のアクロマートなんて作ったら、コスト的には合わないだろう。
実際にはアポクロマート屈折が良いと。


雑誌などの双眼鏡や望遠鏡のインプレッション記事は 明るい場所で、明るい天体を見て
解像度云々を論じるだけでなく、

ちゃんと暗い空の下で、彗星を実際に見ないと
本当の意味で望遠鏡・双眼鏡の性能はわからないと思う。

この春、アトラス彗星が ブレイクしてくれて
彗星をじっくり見たいものだ。

それまで・・・あんまり この彗星が明るくなるって、騒がないように。