自分の子どもに
「アイスクリーム好きなだけ食べて」
「好きなだけゲームをしていいよ」
といえますか?
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関西TVの報道番組のニュースキャスターをみていて、「いいところに目をつける!」と関心した。
http://www.ktv.co.jp/anchor/today/2012_05_30.html#02
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冒頭のような会話を実践しているのが、現役のお医者さんだというところが驚きであった。
奈良県の病院の医師であり、心理学の専門であり、そして「子どもの力を信じる育てかた」という本の著者でもある田中茂樹さんの特集であった。
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内容そのものは私にとっては驚くほどのことではない。
20年前にアメリカの大学の講義ですでに受講した程度であることからすれば、アメリカの心理学会ではそんなことはもう30年以上も前にわかっていたことなのだ。
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ところが、日本という文化はとにかく子どもの教育に対しては戦後60年以上、とにかく間違った方向にむかって全力で進んでしまっている。
「不登校」「引きこもり」「学級崩壊」、どれももう社会的に修復不能にすら思えるこの問題。
実は、根っこは非常にシンプル。
「自分で考える力」「自分で判断する力」を子どもの時から育てていないことが原因。
赤ちゃんのときから大人になるまで
「はい、ご飯。ちゃんと残さず食べてね」
「危ないよ、そこからジャンプしたら怪我するよ」
「テレビばっかり見ないで勉強しないと、あなたの将来大変よ」
「テストがんばったね。次もがんばってね。」
「もう受験は2年後にくるんだから、今からこの計画でがんばってね」
「トイレはいった?はんかちもった?」
「手を洗った?」
自分が何を食べるか、いつ食べるか、下手をすればうんこするタイミングまで親に決められている。
痛みを学習するための怪我や病気は、親がとにかく事前に薬や病院や、手を差し伸べることでほとんど体験させない。
小学校のときから、中学、高校、大学受験を計画されてしまい、自分の将来像は描けない。
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自分におきかえて考えてみればいい。
毎日毎日、「あなたのためよ」と言われ続け、すべて計画されている。
親に嫌われることは本能が恐怖するため、親の笑顔をみるためだけに、好きなことを我慢し、嫌なことをやり、いつしか親の望みをかなえるためのロボットのように行動し、自分で何も考えて決めることができなくなっていく。
こんなことを赤ちゃんから22歳まで続ければ、それは当然おかしくなって普通。
まじめに親のいうことを聞く子どもほど、いい子ほど、どんどんおかしくなっていく。
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私自身ががみがみと親に言われて育ち、不登校のこどもたちとかかわり、そしてアメリカでの心理学の教育を経て、いつか自分に子どもができたなら、どうすれば自分の意思をもてる子どもになるかをずっと考えてきた。
そして今、目の前にわが子がいる。
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母である嫁としては、いくら説明しても納得しにくいこともあるようだが、とにかく話合いをしながら一生懸命子どもの意思を尊重するように説明をしている。
2歳の子どもはご飯を食べないときがある。
あげくのはて、ご飯で遊びだし、机を汚しだす。
すると、母親は怒りだし、怒鳴る。
「食べないの!?食べないならこれからオヤツ無しだよっ!」
2歳になったばかりで片言しか話せない娘も、単語から嫁が何をいっているのかわかるのだろう。
大声で泣き出し、ごはんを食べるどころではなくなる。
それを毎日繰りかえす姿をみて、このままだと食事そのものを苦痛に思う娘になると考え、話をした。
「食べないといっても、怒るかわりに、そのままご飯をいったん片付けてみたら?」といった。
そして、案の定食べなくなったときに、お皿をひいて片付けてしばらくすると、「オカアサン、ゴハン。コハル、オナカペコペコ」と、お願いをしてきた。
そして食べ始めるやいなや、ものすごい勢いで食べてしまった。
それを見る嫁は、結局とてもうれしそうな顔をしている。
母親としての気持ちはよくわかる。
●食べてくれないと健康的じゃなくなるかもという不安
●決まった時間に食べてすませてくれないと、自分の用事ができないという都合
●せっかく作ったものを拒否されたという怒り
けれど、怒鳴り、怒りでいつか食べるようになったとしても、それは子どもにとって強制であり、まるで囚人の食事のように、食べることそのものが苦痛なものだと心理学的にインプットされてしまう。
だから、親として本来すべきは、目の前にゴハンがあるときに食べなければ、次の食事まで何も食べれないということを理解させればいいのではないかと思う。
叱らなくても、食べてもらう方法はあるということだ。
また、人間というのは本来自分で自分の体をよく知っている。
どんな栄養が不足していて、何を食べればいいのかということを。
本当に食べないときは、本当に体に栄養が十分である場合もある。
それならば、無理にたべさせ続けるほうが、自分の体の状態を理解する能力を失い、いわゆる「過食症」「拒食症」といった状態になる可能性もある。
一番いけないのが、オヤツで釣る方法だろう。
「ゴハンをたべたらオヤツあげるよ」
これは説明する余地も無い、最悪な方法だろう。
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食事に限らず、私は1歳くらいのときから、こんな風に、一つ一つ、娘のとる行動に対して本人の意思を尊重できるように配慮を重ねている。
自分でいうのもなんだが娘は本当に生き生きしている。
そしてそんな彼女がとてもいとおしい。
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時間があれば、食事に限らず、子どものしつこいかまって病や、画面にひっついてテレビをみるくせ、人を叩いたり、ひっぱたくくせ、人見知りなどについての対応や考え方も書いてみたい。
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いずれにせよ、この田中さんの決断はすばらしいが、子どもが成長してから気づいたことがつらいところ。
幼児が自由にしたところで、大して被害はない。
けれど、体が大きくなった青年たちが「自由」に動くと怖いものがある。
それの最悪なパターンが30を過ぎての引きこもりや殺傷事件、薬物依存だろう。
自我、自意識、自分を生きる能力というのは、できるだけ小さいうちに「すませておく」ほうがいいだろう。