23年前の今日、名古屋国際空港
(現・愛知県営名古屋空港)で中華
航空のエアバスA300-600Rが墜落、
乗客乗員264名が死亡した。
コンピューターによる自動操縦と
パイロットによる手動操作が競合し、
「力比べ」になった結果、人間が負け、
極端に機首上げとなった機体が失速し、
滑走路上へ落下した事故である。
私はボーイング機しか経験した
ことがないのでエアバスの詳しい
システムを話すことはできないが、
当時のアメリカ機とエアバス機の
根本的な設計思想の違いが事故の
伏線にあったように思う。
ボーイングやマクダネル・ダグラス
(当時)の機体は、人間が操縦輪や
推力レバーの操作を行うと、自動
操縦が解除されたり、一時的に
オーバーライドされたりして人間の
操作の方が優先される設計である。
それに対して当時のエアバス機は
コンピューターによる自動操縦を
解除しない限り、自動と手動の
二つの操作が同時に入力される
特異な構造となっていた。
何度も同じような状況が起きて
いたにもかかわらず、この事故が
起こるまでエアバス社が同型機の
改修を指示しなかったことは、
自らの考えが絶対に正しいという
フランス人の傲慢さが根底に
あったと考えられる。(この後、
全く同じ状況で中華航空がまた
1機墜ちて、ようやくエアバスは
「人間優先」へと舵を切った)
よく訓練された人間の判断力と
咄嗟の操作は、まだまだ機械の
それを上回ることがある。この事故を
思い出すとき、「人か機械か?」に
想いを馳せ、どちらの長所もうまく
生かしながらフライトを作って
いかなければと気持ちを新たにする。
シングルパイロット、あるいは
コックピットの無人化はありえない
机上の理論だと思う。「最後は人」が
安全の全責任を負うべきなのだ。
人間が機械を使いこなしてこその
安全。人が機械に翻弄されては
いけない。
最後に、エアバス社の名誉の
ために、そして、エアバス機で
旅する皆さんのために書き添えて
おくと、このA300-600Rという機体、
航空史に残る傑作機だと思う。
就航から今まで、たった3機しか
墜ちていない。そのうちの2機を
中華航空が墜としている。しかも
全く同じような状況で…
(残りの1機はUPSの貨物機)
安全かそうでないかと聞かれたら、
-600Rは、かなり安全な機体である。
少なくとも、「空飛ぶ棺桶」 DHC8
-Q400とは、同じ「旅客機」という
言葉で括るのが失礼なくらい
安全な機体である。