和訳:飛行計画書
航空機が飛行する際に、コールサイン、
形式、搭載電子機器、出発時刻、飛行
速度、高度、経路、飛行予定時間、
目的地、代替飛行場、搭載燃料、搭乗
人員など、様々な情報を書き込み、
管制機関に提出する書類。
大型機や長距離飛行などでは経路
などが長くなったり、航法計画書などと
一緒に作成するので、コンピューターで
打ち出されるものが多いが、私のような
小型機乗りは毎回手書きで作成する。
はっきり言って、何事もなく無事に
降りてきたらただの紙切れ。あっても
なくてもいいじゃん! みたいな存在。
ただし、「100%無事に降りてくる」と
いう保証があるのならば…
万が一のことがあった場合、この
「紙切れ」が「命綱」になる。
到着予定時刻になっても目的地に
着かない… あるいは飛行中に管制の
レーダーから機影が消えた… などと
いう場合、捜索機関はこのフライト
プランを元に捜索を行う。どこを飛ぶ
予定だったのか? あとどれくらい
飛んでいられるのか? 予定の高度
だったらどれくらい流されているだろうか?
さまざまな角度から分析し、効率的な
捜索を行ってくれる。
不幸にして飛行場以外のところで
降りてしまった、あるいは墜ちて
しまった場合、何人乗っていたかを
確認し、救難捜索が行われる。残念
ながら機長が生きて帰れなかった場合、
このフライトプランが、この世に残した
最後の「手書き」の文書になる。
だから私は毎回、心をこめてフライト
プランを書く。「早く飛びたい」という
気持ちがはやるのか、受け取った相手が
判読に悩むような乱雑な記入をする
パイロットも多く見かけるが、私は
訓練生にも時間をかけてきちんと記入
するように指導している。
「辞世の書」になって欲しくないのは
当然だが、万が一の時、最後に書いた
書類が書きなぐった紙切れだったら、
残された方もやるせなかろう。
0(ゼロ)とO(オー)、5(ご)とS(エス)、
U(ユー)とV(ヴィ)など、誤解を招き
やすい文字はたくさんある。心をこめて、
丁寧に、そして、「この書類に間違いは
ありません、全責任をとります」という
気持ちで毎回サインをする。
流れ作業でやっているように見受け
られるかもしれないが、少なくとも私は
そうやってサインするように心がけて
いる。たぶん一生起こらないだろうと
思いたいが、万が一、わが身に降り
かかった時の覚悟も込めて。