晴れた富士には近づくな… って… | PTD ~ Pilot To Dispatch ~

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ヒコーキオヤジのひとりごと
 空の話、ときどきタイのネタ…

 普段からあれほど口癖の
ように言ってる自分が…
ライト兄弟が初めて空を飛んだ
12月17日、チャーターの遊覧で
富士山へ行ってきました。

 前日までの強風が止み、
視程は最高、地上では風も
最大で3ノットと、絶好の
フライト日和…  
 
 ただ、それは関東平野の
西に連なる山々の高度以下
でのこと。それより高度を取ると、
北西の風がまだまだ残っており、
前衛の山々を飛び越えて富士山の
脇をすり抜けるフライトでは、
富士山の風下に入り、そこそこ
揺れることが容易に想像できた。

    「揺れますよ」
 
 お客様にはきちんと説明させて
いただいた。それでもどうしても
富士山を近くでご覧になりたいと
おっしゃるお客様。
 
 上層風は機体に危険が及ぶ
ほどの強さではなかったので、
「覚悟していてくださいね」と
最後に念押しをしての離陸。
 
 本当は8,500 ftまで上がり、
前衛の山を飛び越えて山中湖へ
向かいたかったのだが、そこまで
上がったらガチでヤバそうな風
だったので、6,500 ftで谷あいを
ぬって大月周りで東富士へ。

PFD  
 時折50ノット近くまで上がる
向かい風で、速度と高度が
安定せず、吹かしても吹かしても
前へ進まない機体。

山中湖と富士
 富士が大きくなるにつれ、揺れが
大きくなる機体、声が小さくなるお客様…
 
 結構揺さぶられ、久々に力で
機体を抑え込んだフライトだったが、
機長として、特に危険は感じなかった。


 
    しかし…



 お客様、全員、見事に
お吐きになられました…

 搭乗客全員吐かせたのは、
フライト人生で初の経験  ( ^ ^ ; 

 だからあれほど言ったでしょ!

 着陸後、駐機場で降機し、
地面に仰向けになってしばらく
動けないお客様…
三次元の揺れが相当堪えた
ご様子でした。

相模湾
 おとなしくこの辺を飛んでいれば
ほとんど揺れなかったのですが…
 
 「晴れた富士には近づくな」
という業界の慣用句、
お分かりいただけましたか? ( ^ ^ +