緊急着陸あれこれ | PTD ~ Pilot To Dispatch ~

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ヒコーキオヤジのひとりごと
 空の話、ときどきタイのネタ…

 航空自衛隊のヘリコプター、
CH-47J型機が福岡空港に
緊急着陸したというニュースを
耳にした。2つあるエンジンの
うち1つの警告ランプが点灯
したためとか。
 
 日本では、飛行計画書に
書かれた目的地以外の飛行場に
降りると何でも事故扱いされて
しまうし、こうのように警告灯が
点いたから戻るというだけでも
緊急着陸扱いされてしまい、
メディアは大騒ぎするが、私、
飛行機乗りの感覚からすれば、
なんでそんなに騒ぎを大きく
したがるのかすこぶる疑問に
思えて仕方がない。
 
 みなさんだって車を運転して
いてなにか警告灯が点いたら、
とりあえず路肩に寄せて様子を
見るとか、ガソリンスタンドで
点検してもらったりしませんか?
 
 普段の生活の中でなんとなく
身体がだるいとか、腰に張りが
あるとか感じたら、家に帰って
安静にするとか、医者に寄ったり
しませんか?

 それと全く同じ状況です。なにか
おかしいかもしれないから警告灯が
点き、それを確かめるために一旦
飛行場へ降りるわけです。降りて
じっくり点検して、それが誤作動だと
わかればまた飛び立ちますし、
本当に不具合が出ていれば修理に
入ります。
 
 大切なことは、機械が発している
サインを見逃さないことと、常に
安全の方向へ舵を切る判断をす
ること。空では「おい、ちょっと左に
寄って止めろ!」というわけにも
いきません。とりあえず最寄りの
飛行場に降りて機械にも、乗務員
にもホッとする状況を作ってから
点検に入ることこそが安全な運航の
基本形なのです。
 
 メディアが「緊急着陸」だと大騒ぎ
することが多いですが、本当に人命が
危機にさらされるような緊急着陸は
それこそ年に1回あるかないかです。

 パイロットは数多くの緊急事態に
対応できる訓練を受けています。
「本当の」緊急事態でも安全に降ろす
訓練をしていますので、「念のため」の
着陸でしたら、もっと安全に着陸できます。

 好きで緊急着陸するパイロットなど
どこにもいません。どうぞご安心して
飛行機にはご搭乗ください。