ルーティン | PTD ~ Pilot To Dispatch ~

PTD ~ Pilot To Dispatch ~

ヒコーキオヤジのひとりごと
 空の話、ときどきタイのネタ…


プリフライト


 「飛行前点検、失格!」 という
タイトルのこの写真、トーイング
バーと呼ばれる、飛行機を地上で
移動させる際に前輪に取り付ける
金属の棒をくっつけたまま飛行して
いるのがお分かりいただけるだろう。
 
 本来ならば格納庫から引き出した
時点で前輪から取り外さなければ
いけないのだが、ついうっかり忘れて
しまったという、この写真のような
事故が毎年結構ある。
 
    嘘のような本当の話。
 
 飛行前点検をきちんとやっていれば
必ず気がつくはずなのだが、点検を
おろそかにしていたり、点検中に
誰かに声をかけられたりして注意力が
削がれたときとか、訓練生に単独で
飛行前点検をやらせて、後から来た
教官が自分で最終確認を実施せず、
訓練生の見落としに気づかなかったり
と、いろいろな原因があるが、いずれの
場合でも、トーイングバーをつけた
まま飛んでしまったら問答無用で

    「アウト」!
 
 「そんなバカな!」と思えてしまう
ようなポカである。そして、大抵の
大事故にはこのようなポカがどこかに
入り込んでいる。
 
 わが飛行訓練部でも以前、離陸こそ
しなかったが、トーイングバーをくっつけた
ままエンジンを始動し、バーを真っ二つに
切断した上に、プロペラを破損させる
という事故があった。これも、教官同乗の
訓練時の出来事だった。
 
 「ルーティン」は「流す」ことではない。
毎回同じことを、初心を維持して続ける
ことができての「ルーティン」、慣れてきた
から他人と話しながらでもできるとか、
昔の半分の時間でできるとか、それは
本当の意味での「ルーティン」ではない。
 
 いつもと同じことを、今まで通り心を
込めて、丁寧に… 

    言うは易し、行うは難し…
 
 しかし、やらなければそこに安全はない。