参考資料 | PTD ~ Pilot To Dispatch ~

PTD ~ Pilot To Dispatch ~

ヒコーキオヤジのひとりごと
 空の話、ときどきタイのネタ…

 調布の墜落事故から1ヶ月半、
国民の多くはそんな事故があった
ことすら忘れてしまっただろう。

 もちろん、事故の最大の責任は
機長にある。それは揺るがない。
しかし、100%彼の責任とは思って
いない。日本はICAOのシカゴ条約
加盟国でありながら、航空事故
調査の本質を無視、反故にし、
システムとしての欠陥を洗い出す
ことせずに「犯罪捜査」だけを
長年行ってきている。今回も警察が
機長個人のみを「犯人」にして幕
引きを図ってしまうだろう。

 まぁ、それは仕方がないとして、
今日ご覧になっていただきたいのは、
南米コロンビアで5年位前に起きた
墜落事故。調布の事故の情報を収集
していく段階で、脳裏に浮かんだのが
この映像だった。




 大人4人プラス小児、それと
生命維持装置。これだけ積んで
離陸できるセスナ172があったら
見てみたい。おそらく重量超過
での離陸だっただろう。

 Soft Field Takeoff(不整地
からの離陸)の手順は間違って
いない。フラップを10°下げ、
前輪を上げ、離陸滑走の早い
うちから浮揚している。
 
 しかし、重心位置がしっかり
収まっていなかったのか、浮揚
直後に機体は大きく右に進路を
逸れる。そのまま機体は上昇を
続ける事が出来ずに墜落。搭乗
していた5人は全員死亡した。

 調布の事故が重量超過だった
のかどうかは怪しいところだが、
映像的にはこんな感じで墜落
したのではなかろうか?
 
 以前やってできたからといって
今回できるとは限らない。航空機の
運用は賭けであったはならないのだ。
運航は常に許容運用範囲内で実施
しなければならないという教訓の
動画でもある。私の飛行訓練部でも
年に1度くらいは部会でこの動画を
流し、部員達の啓蒙に使わせて
もらっている。

貴重な瞬間。同じような事故で
死亡する人がこれ以上増えないよう、
事故から学ぶことは非常に多いし、
大切である。願わくば、調布の
事故も、「個人の犯罪」で決着
させてしまわずに、ベルハンド社や
エアロテック社の、航空という大きな
システムに関わる上での果たすべき
だった役割まできちんと踏み込んで
調査分析を行って欲しいものである。

 正確な事故調査、背景を含めての
分析から導き出される教訓を学んで
こそ、死亡した搭乗者への餞になる
のではなかろうか?