とあるインタビューを受けた。
「教官のツボ」みたいな質問を
受けたので、「教えないこと」と
返答したところ、相手がポカンと
なってしまった。
字面通りに受け取られたら
何もしていない。自分で自分を
否定することになってしまう。
これは、知識や技量を押し
つけない、流し込まないという
こと。訓練生の許容量以上の
内容を詰め込もうとすると、
論理的な思考や身に着けた
知識や技量を組み合わせて
新しいことをできるようにする
といった応用力が育たない。
相手の容量や処理速度を
見極めながら、できるだけ
自分で上達していけるように
気をつけている。
私のスタンスは、「教官は
良き助言者」… 主役は当然
訓練生。基本、まずは訓練生に
やらせる。できなくて苦戦して
いるときにチョコッと助言する
程度。進捗が見られない場合に
限って私が操縦輪を握る。
地上でのブリーフィングでも、
こちらからの一方的な情報の
伝達ではなく、必ず訓練生に
考えさせて答えを出させる。
訓練生が学ぶ気持ちに
なっている時には習熟度が
高くなるので、できるだけ
訓練生の頭を使わせるように
している。自分で考え、答えを
出せるようにさせている。
教官の本当の仕事は、
教えることではなく、訓練生の
「やる気」、「学ぶ気」を引き出し、
維持させることだと思っている。
結局最後は自分だからね。
コックピットに座っていれば
技能証明が出てくると思ったら
大間違い。私の訓練は質問の
連続。質問返しも常套手段。
「考えられるパイロット」を
産み出せてこそ、「良い教官」
なのだろうと思う。