調布の事故から一週間 (1) | PTD ~ Pilot To Dispatch ~

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ヒコーキオヤジのひとりごと
 空の話、ときどきタイのネタ…

 どうもマスコミは今回の事故の
原因を「調布だから墜ちた」とか
「暑かったから墜ちた」という方向に
持って行き、死亡した機長個人の
人的ミスにして封印したいらしい。
そうしてほしい人たちがいるのか?
 
 調布がいけないのなら、既に
ポカスカ墜ちているだろう。暑さが
原因ならば、あの日、関東平野で
小型機がもっと墜ちていたはずだ。

 ある航空評論家は、テレビ局からの
出演依頼に対して上記の正論を
述べたら「来なくていい」と言われたと
Twitterでつぶやいている。マスコミは、
自分達が「こうだ」と決めた結論に
沿って、都合のいい証言をする評論家や
自称ベテランパイロットなどをかき
集めている感がある。

 毎日新聞などは記事(→参照 )中で
マニュアル上の数字いじりをして
悦に入っている様だが、航空機は
同じ型式でも個々の機体で装備が
異なり、機体重量なども大きく違う
ことをご存知ないようで、本来ならば
墜落したJA4060の数値を用いて
計算しなければ正しい報道はできない
のに、それをせずに機長が危険な
ミスを犯したかのようなミスリードを
煽っている。
 
 Wikipediaや東京新聞の報道で、
JA4060機の事故当時の数字が
出ているので、それで検証してみよう。
wikiのページ
 
 まず、パイパー社の運航マニュアルから

  最大離陸重量:4,340 lbs ≒1,968kg

これを端折って1,950kgとしていることは
水増しでもないし、単に数字を丸めた
だけだと思い、問題はないと思っている。
 
 続いてゼロ燃料重量(燃料も乗客も
貨物も載せない、機体本体の重量) 
これが1,200kg。

 燃料は280kg搭載していたとある。

 280kg≒617.2943lbs≒102.8gal。

 これが報道の言う「5時間分」の燃料
だとすれば、

102.8÷5=20.57gal/hの燃料消費率となる。

 マリブの20,000ft巡航時の標準燃料
消費量が18gal/hだから、より低高度を
飛んだであろう大島往復(低高度では
空気抵抗も大きいし、気温も高いため、
消費燃料が増える)、離陸上昇時には
もう少し燃料を食うだろうから、この数字も
大体合っていると考えたい。
 
 それでは、この条件で毎日新聞さんの
誘導する「重量オーバー」があったのかを
検証したい。

 最大離陸重量は 1,950kg
 ゼロ燃料重量は 1,200kg
 搭載燃料は     280kg

 1,950-(1,200+280)=470kg
   (これが搭載可能重量)

 事故当日の搭乗人員が5名、
 470÷5=94
 
 94kgの人が5人、あるいは荷物と
体重合わせてこの重量の乗客が
乗り合わせたことになる。

もしも、本当に重量オーバーで
飛行を試みたのならば、さぞかし
窮屈な機内だったことだろう。
 
   (また長くなりそうなので続く)