最高の予習は「復習」 | PTD ~ Pilot To Dispatch ~

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ヒコーキオヤジのひとりごと
 空の話、ときどきタイのネタ…

 何もできない、何も知らない訓練生を
一人前のパイロットにするのが私の仕事。
初等教官というのは、実は一番大変な
仕事だと自負している。必要な知識や
技量をきちんと習得させなければ後々の
進捗に支障が出るし、最悪航空事故を
引き起こす可能性だってある。
 
 訓練生も様々で、優等生もいればなかなか
伸びない者もいる。ただ、私の部署は士官
学校でもなければ航空大学校でもない。
少しぐらいデキが悪くてもエリミネートと
呼ばれる「訓練中止→クビ」はない。各自が
自分の能力に合わせて、最終的に自家用
操縦士の合格基準に達してくれればいい。
 
 そんな環境下において、速度の違いこそ
あれ、「よく伸びる」訓練生は総じて「復習」を
きちんとしてきてくれる傾向にある。
 
 訓練開始時に私はきちんと言い渡すし、
日々のブリーフィングでも繰り返すが、私は
「最高の予習」は「復習」であると信じている。
 
 できないことをできるようにするわけだから
当然新しいことを学んでいかなければならない。
自分でそれができるならば始めから一発で
実地試験を受ければよいだけのことなので、
そういう天才以外は我々のような教官の世話に
なる。進歩を求め続ける以上、日々新しい
課題の連続である。
 
 訓練が終わると、デブリーフィングといって、
その日のフライトでよくできた点、次回の
訓練でより上達を図りたい点などを訓練生に
説明し、必要に応じて読むべき文献等を
指定する時間を設ける。たいていの訓練生は
「ハイ ハイ」と聞いて終わり。ここで質問を
してくる訓練生は大丈夫。次回はきっと伸びて
いる。問題は、わかっているのかいないのか、
黙って話を聞いているだけの訓練生。彼らには
「次回のフライトの前に5分でいいから今日
やったこと、私に指摘されたことを思い出すこと」
と付け加えてブリーフィングを締めくくる。
 
 たとえ教室に来る直前に駐車場で車から
降りる寸前でもいい。前回私と飛んだ内容と
課題を思い出してくれれば、その日の訓練は
格段に実りの多いものになる。
 
 訓練は実費で行うわけだから、私もできるだけ
早く、安く仕上げてあげたいとは思うのだが、
訓練にはきちんと「ゴール=実地試験基準」が
ある。そこまでいかに早く、正確に辿りつくか…
教官は全力を尽くすが、それだけでは不可能だ。
 
 訓練生がいかに「伸びよう」とする姿勢に
なれるか… これは飛行訓練の世界に限った
ことではない課題だろうが、私は「復習」の徹底が
非常に効果があると感じている。
 
 飛行前ブリーフィングを開始する前に
「前回俺に言われたことを言ってみなさい」と
聞くだけで、訓練生がどれだけ前回のフライトを
理解していたか、それを復習してきたかがわかる。
もちろん、忘れていたらもう一度きちんと説明
するけれども、それは時間=カネの無駄になる。
 
 飛ぶことも大事だが、それ以上に「学んだことを
身に着ける」ことが大事。これはコックピットじゃ
なくても簡単にできる。
 
 「復習」こそ最大の「予習」なり。
 
 さぁ、今日は晴れたぞ!